日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

世の中のことはだいたい自分は分かっている(つもり)と思っている方に読んで頂きたい本

大人のための嘘のたしなみ(著者:白川道)、幻冬舎新書、2006年1月第1刷発行、

ーーーーーーーーーーー

この本は書き出しがおもしろいです。

 

私は嘘の大家である。それは私が嘘つきだからとか、小説を書いているからとは、関係がない。しかし、私ほど嘘について語ることのできる人間はそうもいないだろう(3ページ)

 

「〇〇の大家」という言葉自体はよく聞きますが、「嘘の大家」という言葉は初めて聞きました。「嘘」といえば、ふつうはよくないこと、わるいこととされています。

 

この本は、そんな「嘘」を取り上げている本です。タイトルから察するに、大人である以上、必要にせまられてつかなければ嘘があるという話しかと思われます。もちろん、そういう話もいろいろあります。人間関係を潤滑にするための、あるいは、傷つけないための嘘がそれに当たります。もちろん、嘘をすべて肯定するわけではなく、その区別は、自分の利益のためだけにする嘘なのかどうか、という基準でしています。自分の利益のだめだけの嘘をつく人、それを詐欺師と言います。

 

嘘でないものも含まれるかもしれませんが、男女関係において、男と女のギャップを分析しています。男からするとこの程度は許される、言い換えれば、相手のためを思ってついた嘘が、女からすると許せない場合、もちろん、その逆もありますが、なぜ、そこに男女間でギャップが生じてしまうのか、面白い分析をしています。

 

この本は嘘が必要なときがあるということのほかに、許されない嘘の存在も指摘しています。世の中に流されている建前、偶像、イメージが、どれだけ嘘なのかということや、世の中にはとんでもない嘘をつく人が存在するということを、著者の豊富な人生経験もまじえつつ、述べています。たとえば、「学歴なんて意味がない」という風潮には罪深い嘘が潜んでいると述べています(110~120ページ)。

 

許されない嘘ですので、自分でマネをするということはあり得ないのですが、逆に、このように建前の裏表を「嘘の大家」が分析してくれていますので、自分が嘘にだまされない、あるいは、世の中には一見もっともらしい顔をして流されている情報もじつは嘘だらけということがある、ということを教えてくれます。

 

この本は白川氏の豊富な人生経験を踏まえて書かれており、白川氏が経験したあるいは聞いた実話もところとごろ紹介されています。男女のトラブル、お金のトラブル、とんでもないロクデナシのこと、ギャンブル・投資のことなどの話しです。とてもふつうの人生経験では体験できませんし、体験したいとは思いませんが、純粋に経験談として読むだけでもとっても面白いです。笑い、呆然、驚きなど、ちょっとしたエンターテイメントです。世の中には自分の知らないこんな出来事、こんな人、こんな嘘があるんだということを教えてくれます。世の中再発見です。

 

 

今いる会社で働き続けるかどうか決めるとき、この本を読んでから決めて欲しいと思う本

崩壊する組織にはみな「前兆」がある 気づき、生き延びるための15の知恵(著者:今村英明)、PHPビジネス新書、2013年5月第1版第1刷発行、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

著者の今村氏は、コンサルタントとして19年間、内外の一流企業に経営アドバイスをしており、様々な企業を見ています。そんな経験を踏まえ、崩壊する組織にある「前兆」として、15の現象を紹介しています。今村氏は、経営者のためにこの本を書いたのではなく、若いビジネスパーソンに対して、早めに自分の属する組織の崩壊の前兆に気づき、上手にリスクを回避できるようにということで、この本を書いています。そして、「前兆」は、大企業、中小企業を問わず、例外は一切ありません。

 

既に会社に入社している会社員の人、あるいは、今年学校を卒業して会社に入社した人、どちらの方にもぜひ読んで頂きたい本です。そして、万が一、自分が入社した会社に、この本で紹介する「前兆」があったらどうすべきか?なかなか難しいところです。

今村氏は「先駆者シナリオ」、「体制転換者シナリオ」、「没落者シナリオ」という3つのシナリオを紹介し、一番多いのは3番目の、何か変えないといけないとうすうす感じつつも結局何もしないシナリオであり、そして、万が一企業が崩壊すると、この人たちは企業と一緒に没落してしまいます(145ページ)。

 

それゆえ、今村氏は、会社崩壊を回避するために何かすべきであるということを勧めています。それもひとつの対応の仕方かなあと思いますが、一方で、現実問題、若手社員ができることには限界があります。いくら変えようと思って努力しても社内の抵抗に合い何も変えられないということもあり得ますし、変えることができたとしてもすでに手遅れで会社の崩壊をとめられない、ということもあり得ます。今村氏は、どんな優良企業でも崩壊するときは一瞬であるとして、危機(「前兆」とは別)発生から崩壊まで、約3か月しかかからなかった実際例を紹介しています(220~222ページ)。

 

「前兆」が自分の会社であった場合、会社を立て直すのか、それとも辞めるのか、これは答えは1つではありません。それは、そのときに自分で考えるしかありません。

 

一方、会社を辞めるという話しでは、入社した会社がブラック企業だったら辞めるのか、という話しがあります。でも、この本で問題にしているのは、ブラック企業かどうかではありません。「前兆」の中にはブラック企業であることをうかがわせるものもあり、多少は重なりますが、ブラック企業であることとその会社が崩壊することはイコールではありません。ブラック企業でも利益を出して存続することは可能だからです。

 

ところで、みなさんはご存知でしたか?

 

日本と欧州の全企業の平均寿命は12.5年、最近20~30間に日本で新に設立された企業の4社に3社は設立後10年以内になくなっています(203ページ)。

 

ゴーイング・コンサーン」という言葉があり、企業は人間と違って永久に存在しているかのようなイメージがあります。終身雇用はなくなったと言われて久しいですが、いまいち実感が持てない人も大勢いますが、それは、このイメージがあるためでしょう。それ自体は一般論としては間違いではないのですが、現実は数字が明確に示しています。この数字を見れば、とても終身雇用などという期待を企業に持つことはできないことは、明らかです。

企業は12年で終わりますが、人間は80年ぐらい生きることが平均的です。学校卒業後で考えても、残り60年ぐらいの人生をどう生きるのか、ということを考える時、平均で12年しか存在しない企業に人生を依存するのはたいへんリスクの高い行為です。

 

自分の長い人生において、お金を稼ぐという側面におて、企業という組織とどう付き合っていけばいいのか、考えさせられる本です。

 

この本を読むと簡単に飲食業で成功しそうと思ってしまうほど、成功の法則をシンプルに分かりやすく教えてくれる本

ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する 絶対に失敗しないビジネス経営哲学(著者:島田紳助)、幻冬舎新書、2007年5月第1刷発行、2009年7月第17刷発行、

ーーーーーーーーーー

著者の島田紳助氏といえば、いまは引退していますが、かつてはお笑い芸人として大活躍、「行列のできる法律相談所」の司会者としてテレビで見たことがある人も多いと思います。

お笑い芸人を本業としつつも、島田氏は、サイドビジネスとして、飲食業などをいくつも展開しています。25歳のときにサイドビジネスを始め、なんとこれまで一度も失敗なし。島田氏は1956年生まれなので、2007年当時でおそらく51歳、つまり、26年間失敗なしということになります。これはすごいことです。

 

芸能人のサイドビジネスというと、よくあるのが、いわゆる名前貸しというもの。つまり、芸能人の名前を企業に貸し、企業がその名前を活用して自社製品などを販売するやり方。芸能人本人は何をしているかというと、何もしていない。でも、名前貸しをしているので企業からお金が入ってくるというもの。これであれば、成功しても、それは芸能人本人のアイデアとかのおかげではありませんが、島田氏の場合は違います。そういった名前貸しのビジネスではなく、本当に自ら経営を行っています。さらにおどろきですね。

 

ちょっと不思議なのことがあります。お笑い芸人としてあれだけ成功している島田氏なら、とうぜんお金には困っていないはず。ではなぜわざわざ、自分で手間をかけてビジネスをするのだろう?という疑問が生じます。島田氏はこういっています。

 

自分のアイデアが、現実の世の中に通用するかどうかを確かめてみたい。それが、僕がビジネスをする最大の理由だ(10ページ) 

 

この理由が、島田氏のビジネスの成功の理由にもなっています。自分のアイデアが通用するか確かめたいということは、自分のアイデアでビジネスをしている人が、まだこの世の中にいない、少なくとも、島田氏が調べた限りではいない、ということを意味します。それはつまり、そのアイデアは、これまでの業界の常識とは半々する内容ということ。成功するためには、人の真似をしてはいけないという教訓です。でも、業界の常識すべては否定していません。正しい常識と間違った常識が混在し、正しい常識には従わないといけないが、意外と間違った常識が多いと言っています。では、正しいか正しくないかはどうやって区別するのか?それは自分で考えるしかありません(24~26ページ)。

 

また、さらに別の教訓にもつながっています。儲けようとしてビジネスをするとたいてい失敗するというものです。島田氏は、店で働く従業員には十分な給料を払う必要があり、そのためにもちゃんと利益をあげないといけないとは述べていますが、儲けることばかり考えていると、冷静さを欠いてしまい、自分の商売の欠点や改善点に気付かなくなるから、儲けようとしてビジネスをしてはいけないという教訓です(142~143ページ)。

 

こうなってくると、この本、サイド・ビジネスの指南書として執筆されてますが、その内容は、サイド・ビジネスのレベルを超えています。本業としてされる方にとっても、立派な指南書になっています。考えてみれば、お客からすれば、そのビジネスが本業かサイドかどうかは関係ないので、どちらにも通じる指南書になるのは当然といえば当然ですが。

 

この本を読むと、いままで飲食業をやったことのない自分でも、というかやったことがない自分だからこそ飲食業で成功できるのではないか、とついつい思ってしまいます。もちろん、実際はそんなに簡単にいくはずもなく、島田氏も簡単に成功するとは一言も書いていませんが、なぜかそう思ってしまいます。それは、島田氏がこの本で述べる内容が、とても簡潔、明快で、読んでいてすとんと理解できるものだからだと思います。わたしの経験上、分かりやすく説明してくれる人は本当にそのことを理解しているのだと思います。逆に、難しいことばかり言う人は、じつは分かっていないのではないかと思っています。

 

25年以上無敗記録を持つ人はさすがです。

じつは恐ろしい世の中で生きていることに背筋を凍らすとともに、どうすればいいのかを教えてくれる本

政府は必ず嘘をつくーアメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること(著者:堤未果)角川SSC新書、2012年2月第1刷発行、同年4月第5刷発行、

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

いま日本では、森友問題での公文書かいざん問題、防衛省の日報問題、あるいは少し前で忘れ去れたようですが厚生労働省裁量労働制に関するデータ問題など、公文書についての問題が噴出しています。このときにこの本に出会うのは、ただの偶然とは思えないタイミングの良さを感じてしまいます。しかし、この本で述べている話のレベルは、森友や日報のレベルをはるかに超える、深刻なものでした。

 

サブタイトルのとおり、この本は、アメリカで起こったことが日本でも起こるという内容ですが、日米の何を比べているかというと、そのひとつは、9.11同時多発テロと3.11東日本大震災です。

9.11同時多発テロにおいて、世界貿易センタービルで救出活動に従事した人たち(ボランティア含む)に、肺がんなどの呼吸器系の健康障害が大規模に起こっています。ところが、当時、アメリカ政府は、作業現場は安全であると言い続けていました(21~22ページ)。この言葉、どこかで聞いたことありませんか?そうです。3.11東日本大震災のとき、当時の日本政府は、「ただちに健康に害はありません」と言い続けていました。そっくりです。果たして、この言葉をそのまま真に受けて本当に良いのでしょうか?ほかにもいろいろありますが、本当に政府の言うことをそのまま信じていて大丈夫なのでしょうか?というのが、この本が読者に対して発信する最大のメッセージです。

 

こう言われると、こんな疑問を持つ方もあると思います。

①多少は事実と異なる情報を政府が発信することはあるかもしれないけど、それは例外に過ぎないのでは。そもそも、なぜ政府がそんなことをする必要があるのか?

②いまのようにインターネットが発達した時代に、情報を隠し通すなんて、政府といえでももうできないのでは?また、マスコミの報道もあるから大丈夫では?

たしかに、どちらの考え方も一理あるなあと思います。それに、正直いって、政府が情報を隠しているなんてことはあってはいけないし、あって欲しくないので、疑問の内容が事実であって欲しいと願う気持もあります。

この本は、こういう考え方に対しては次のような話を紹介しています。

 

①についていえば、こんな話しがあります。

「どうしても腑に落ちないニュースがあったら、カネの流れをチェックしろ」(162ページ)

WHOの運営資金は加盟国政府からの拠出金でまかなわれることになっているが、ここ10年で民間企業からの助成金が急激に拡大し、今では国連予算の倍の資金を私企業から受け取っている(52ページ)

 カネの流れを調べると、東京都が、東日本大震災の被災地から出る瓦礫の受入れを反対を押し切って決定したのはなぜか、ということがわかります(165~167ページ)。また、これは日本だけの話しに限りません。国際機関でも同じことになっていても、ぜんぜん不思議ではありません。お金の流れは雄弁です。

 

②についていえば、福島第一原発に取り付けられた「ふくいちライブカメラ」の話があります。わたしはぜんぜん知らなかったのですが、当時、この映像に修正がなされているのではないか、という指摘があったそうです(132ページ)。さらに、こんな話しもあります。

3・11後、ソーシャルネットワークサービスのひとつであるミクシイに、東電の計画停電についての疑問を書いた日記をアップしようとしたところ、何度やってみても反映されなかったという話をあちこちで聞いた。他にも、ヤフー・ブログでドイツの気象庁が提供する風向き予測をベースにした「日本国内放射能移動予測」を載せたところ、勝手に削除されたという会社員がいる(149~150ページ)

 

マスコミの報道については、いぜんこんな本を読みました。

 

mogumogupakupaku1111.hatenablog.com

 

 

この本では、9.11世界同時多発テロ、3.11東日本大震災だけでなく、東日本大震災復興事業、TPP協定、教育・学校改革、医療改革、米国の対テロ戦争など、さまざまな事例をとりあげて、その政策決定過程において、政府が国民に正しい情報を提示していないか、ということを説明しています。

これら分野も内容も違うし、また、実行主体も違うバラバラの政策において、なぜそのようなことが共通に起こるのか、キーワードは「コーポラティズム」です。初めてこの言葉を聞いたという方には、とくにこの本をおすすめします。

スピーチライターに興味がある人だけでなく、仕事で周りの人に説明・説得をしないといけない人に読んで頂きたい本

スピーチライター 言葉で世界を変える仕事(著者:蔭山洋介)、角川oneテーマ21、2015年1月初版発行、

ーーーーーーーーーーーーーーー

スピーチライターというと、政治家とかの演説の原稿を政治家に代わって作成する人というイメージです。スピーチライターと聞いて最初に思い浮かべるのは、2008年のアメリカ大統領選挙においてオバマ氏が演説で使った「Yes we can」というフレーズを考えた人というものではないでしょうか(4ページ)。

 

一方で、実際に政策を立案し遂行するのは、政治家でありその指揮の下で役人などの実務家が行います。実務家からすると、たんに聴衆に聞こえのよい言葉を考えるだけのスピーチライターの存在というのは、何もしていないのに調子に乗っている、派手にかっこつけてるだけといった、ネガティブな印象を持つのではないかと思います。この本のサブタイトルの表現には、かなり反発を感じるのではないでしょうか。実際アメリカにおいては、一時、スピーチライターがホワイトハウスから追い出されたことがありました(21~22ページ)。

 

いずれにしても、日本においてはまだそれほどなじみのある職業とはいえないスピーチライターという職業がどういうものなのか、ということを現役のスピーチライターが実例もまじえながら具体的に説明してくれています。この本を読んでよくわかったのは、スピーチライターというのは単にスピーチ原稿を書くだけの仕事ではないということです。演説する人が何を発信したいと思っているのかを理解し、そして、必要な情報を収集、分析し、さらには、スピーチに対してどんな反論がなされるかということも想定して原稿内容を考える、言い換えれば、演説する人になりきって原稿を考える仕事です(186~187ページ)。

これからスピーチライターという仕事をしたいと思っている人にとっては、とても面白い本です。さらに、広報関係の仕事をしている人にも有益な本です。広報担当者のことをスピーチライターとは言いませんが、実際、会社の社長がしゃべる原稿を作成していれば、それはスピーチライターといえますし、さらに、広報の経験を積んで将来独立を考えるのであれば、まさに、広報担当者とスピーチライターは同じです。

 

一方で、スピーチライターが演説する人になりきって原稿を考えると聞くと、演説したのは本人でも内容はスピーチライターが考えたので、それは本人の本当の演説ではないという見方もできます。でも、そうではないんですね。どんなに良い演説内容をスピーチライターが考えても、その内容を演説する本人が納得していなければ、演説に説得力が生まれません(61~62ページ)。「Yes we can」というフレーズの場合、それをオバマ氏以外の政治家が演説で使っても、あそこまで聴衆に大きな影響を与えるとは限らず、オバマ氏があのフレーズを言ったからこそ、影響を与えたのであり、フレーズを考えたのはスピーチライターでもやはりあのフレーズはオバマ氏のフレーズと言えます。

 

また、演説の良し悪しというと、「Yes we can」のような特徴的なフレーズの有無にどうしても注目がいってしまいますが、それは結果にすぎません。演説全体の中で、そのフレーズに至るまでのところで、聴衆の共感をじわじわと得られるように演説内容を工夫し、その結果が、フレーズに対する聴衆の強い反応につながります。これを突き詰めると、あえて、名言みたいな言葉を考えなくても良い演説は可能とも言えます。

 

演説とかスピーチをする人にとって、一番嫌な状態とは、聞いている人が居眠りをしてしまったり、スマホをいじったりして、自分の話しを聞いてくれない状態でしょう。なぜそうなってしまうのか?演説、スピーチというと、ついつい、話し手の考えてること、言いたいことつまり意見を述べるものと考え、意見の内容はしっかり演説内容に盛り込まれますが、それではダメだそうです。いくら自分の意見ばかり聴衆に伝えても聴衆は共感してくれません(66~67ページ)。居眠りされたりスマホをいじられたりという経験、わたしはこれまでイヤというほどしています。これまでは、なぜそうなってしまうのかぜんぜん原因が分かりませんでしたが、共感がポイントだということがよく分かりました。

 

演説というと政治家の話しになりますが、そこまでの大げさなものではなくても、社内で上司や部下、あるいは他部署に対して何か説明をし同意を得る必要があるとき、社外の顧客に自社製品について説明をし契約を取る必要があるときなど、スピーチ、正確には説明・説得なのかもしれませんが、スピーチというのは、一部の特殊な人に発生する業務ではなく、ひろく仕事をする上で発生する業務です。もちろん、ふつうの人はスピーチライターなど付くはずもなく、自分で内容を考えないといけませんが、そういうときに、この本はとても参考になります。

なにかで悩んだりしている方が、その悩みをすっきり解消するために読んで頂きたい本

鈍感力(著者:渡辺淳一)、集英社e文庫、2017年9月発行、

ーーーーーーーーーーーーーーー

電子書籍なので発行が最近の日付になっていますが、いまから8年前に出版され、当時とても話題になったあの「鈍感力」と同じ本です。「鈍感力」という言葉は当時の流行語大賞にノミネートされました。

 

わたしの記憶によれば、「鈍感力」という言葉はこの本が出るまでに日本語としてはなかったと思います。もちろん「鈍感」という言葉は以前からありましたが、「鈍感」とは、感じ方がにぶい、気が利かないという意味として使われ、むしろ改めるべきことでした。それを、ひとつの能力という意味で表現する「鈍感力」という言葉がなかったのはとうぜんのことです。しかし、この本をきっかけに「鈍感力」という言葉が生まれ、さらにそれがプラスの意味で使われるようになりました。

 

では、「鈍感力」とは、にぶい能力、気が利かない能力という意味かというと、もちろん、著者の渡辺氏はそういう意味では使っていません。しかし、この言葉をそういう意味合いで使うケースがあったのは事実です。

 

たとえば、政界などで問題を起こしながら平然としている政治家に対して、「鈍感力のある政治家」などと表現している記事を見かけることもあった。わたしはこうした記事を書いた新聞記者に、『鈍感力』をきちんと読むように、と注意したことがあるが、この使いかたは明らかに間違っている。いうまでもなく、こうした無神経で鈍感な男は、単なる鈍感でしかない(「文庫発刊にあたって」)

 

渡辺氏はこのようにこの本の中で述べ、正しく理解されていないことに困惑しています。じつはわたしも、この本を読むまでは、「鈍感力」という言葉の意味を、この新聞記者と同じような感じで理解していました。なので、ある意味、「鈍感」という従来は良くないこととされていた行いを正当化する、ある意味開き直りの本がこの本かなあと思っていました。

 

しかし、こんかい読んでみて、よーくわかりました。まったくそういう意味ではありませんでした。わたしなりにあえてまとめてみると、図太く生きる能力、些事にこだわらない能力、何事も(例外あり)まあいいかと思える能力という感じです。

 

とかく現代は、どうみても過剰に気を使うことが多いです。たとえば、サービス業で接客している人に対する客からの過剰な要求やクレームなんていうのは、その典型でしょう。そういったことでふだん困っているサービス業で働く方には、ぜひこの本を読んでいただき、無駄に気を使って傷ついたり、あるいは、悩みすぎて健康を害したりといったことがないようにしてもらえたらいいのではと思います。

 

「鈍感力」の適用範囲はとても広いです。仕事で付き合いのある取引先の人との関係、職場での上司、同僚、部下との関係、さらには、友人関係、男女関係、夫婦関係、親子関係と幅広いです。あらゆる人間関係において、自分や周りの人それぞれが自分らしく生きていくために、鈍感力は必須の能力でしょう。

 

また、鈍感力は人間関係だけではありません。文字通り、感覚の鈍さにも関係します。人間には五感、つまり視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚があります。この本は、こういった感覚も鋭すぎるのは考えものであるとしています。鋭すぎるといろいろ気になってしまって、鈍感力を発揮できなくなってしまいます。意外な話しです。ふつうはこういった感覚が人より鋭いことはプラス評価の理由になると思いますが、必ずしもそうではないようです。もちろん仕事上、特殊な感覚が必要という場合は別ですが。

 

いちどきりの人生、楽しく生きなければ損です。誰もが分かっていることですが、人生にはいろいろあって、悩み苦しみといったことからは避けられません。そういったこととうまく付き合いつつ人生を楽しむ上で、「鈍感力」は大事な能力でしょう。

 

8年前にとても人気だった本を、その存在を知りながら、やっといまにして読んだ私は、ほんとうに「鈍感」なのでしょう(笑)「鈍感力」はまだ身についていないようです。

イチロー選手を通して、世の中でどうすれば成功できるかを、知ることのできる本

はたしてイチローは本当に「一流」なのか(著者:江尻良文)、双葉新書、2011年4月第1刷発行、

ーーーーーーーーーーーー

「何を言っているのか?」というのが、タイトルを読んだときにさいしょに思ったことです、メジャーリーグで大活躍するイチロー選手が一流でなかったら、誰が一流なのだろう、という感じです。

 

ところが、本を読み進めていくと、イチロー選手のどこがどう一流なのか?ということが、意外と分かっていないことに気付かされます。

 

たとえば、イチロー選手のメジャーリーガーとしての評価は、アメリカと日本とではだいぶ違うようです。

 

王貞治氏がWBC日本代表チームの監督をしたときにイチロー選手がチームのため日の丸のために大活躍し、それをきっかけに、熱い男というイメージが定着していますが、それを額面どおりに受け取ってよいものかどうか疑問なしではないようです。

 

また、イチロー選手に限ったことではありませんが、プロ野球選手として成功するには、政治力が求められるようで、イチロー選手はこの政治力にすぐれていて、それが現在の地位を得るために大いに役立っているようです。WBC日本代表が王監督のとき、イチロー選手は日本代表チームに参加しましたが、松井選手は参加を辞退しています。この本では、イチロー選手による松井選手日本代表降ろし疑惑について述べています。あくまでも「疑惑」なので、真相は分かりませんが、「疑惑」ではなく「事実」だとしたら、イチロー選手に対するイメージは180度変わることは間違いないでしょう。

 

イチロー選手をどう評価するのか、という話とは別に、この本にはとても重要な内容があります。それは、あらゆる世界において、どうすれば自分は成功できるのか、というヒントが含まれています。

 

自らの商品価値をどうやったら最高のレベルにもっていけるか。それを知っている人間は、いかなる世界でも成功する。仮にイチローがそこまで想定し、松井降ろしを本当に行っていたのだったとしたら、彼はビジネスの世界でもトップに立てる才能の持ち主だろう(48~49ページ)

 

イチロー選手のやり方の良し悪しは別として、じっさいイチロー選手はプロ野球選手として大成功をおさめています。そんなイチロー選手のやり方から学べることは多くあります。しかもそれは、表面的に知ることのできるイチロー選手の行動、イメージからでは無理で、深層的なところにこそ、学ぶべきところがあります。この本は、従来知られていないイチロー選手の実態を教えてくれる点で、とても学べるところのある本です。