「目の見えない人は世界をどう見ているのか」伊藤亜紗
タイトルを読んだとき、目の見えない人は視覚の代わりに別の感覚がそうでない人よりも発達している、というような話かと思いました。
たしかに、そういう話もありました。それはそれでとてもおもしろい。たとえば、空間や色彩感覚といった話はとても興味深い。でも、このことは、この本のおもしろさのほんの一部に過ぎません。
通常、目の見えない人は目の見える人と比べると、視覚以外の感覚が発達しているという点はあるとしても、全体としては、不自由な生活をしていると考えます。おそらくこれが世間の常識でしょう。でも、この本を読むと、そんな常識の存在を疑わざるを得なくなるような気持ちになります。
「やれやれ、目明きとは不便なものよ」
「見えない人には死角がない」
「障害の使い道」
この3つのフレーズどれも、それまで全く聞いたこともないし、考えたこともない内容です。このフレーズだけ読むと驚きしかなりませんが、その文脈や、作者がなぜこのようなことを言うのか、という理由も含めて読んでもらえれば、納得です。
この本を読んだ後に町で目の見えない人にあったら、きっといままでと全然違うイメージで見てしまうことになるでしょう。