日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

2017年の総選挙で自民党がなぜ勝利したのか、よくわかる本

「「強すぎる自民党」の病理ー老人支配と日本型ポピュリズム池田信夫、PHP新書1058、2016年8月第一版第一刷

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2017年10月22日に衆議院議員選挙、総選挙があり、またしても自民党が勝利しました。自民党、本当に強いなあと思っていたら、ちょうどこの本を見つけ、いいタイミングと思い、さっそく読んでみました。

選挙に強い党とはどんな政党か?という質問に対してこう答えています。

テレビ業界では「視聴者をバカにした番組ほど視聴率が取れる」といわれる。同じように選挙も、国民をバカにした党が勝つ。これはデモクラシー(大衆支配)の本質的な欠陥である(17ページ)

うーん、ちょっと複雑。自民党は国民をバカにしているということでしょうか?少なくとも自民党に投票した人はそうは思っていないはず。それだけやり方が巧妙ということでしょうか?

この意味では、安倍首相はポピュリストである。というよりは自由民主党という党が、1955年に保守合同で生まれて以来、一貫してその時代の多数派に迎合する以外の政策をもたないポピュリズムの党だったのである(18ページ)

今回の総選挙で自民党は消費税率引上げを公約にしていました。その自民党が勝ったのはなぜだろう?疑問はまだ残ります。

選挙のときだけ投票する民衆は結果に責任を負わないので、増税を拒否してバラマキ福祉を求める。こういう「民の声」が大きくなると、それに迎合する僭主が人気を得て実権をもつようになる。だから民衆の発言権が大きくなると政治は劣化するのだ(24ページ)

これはこれで鋭いですね。たしかに、国民が選んだ政治家が政治をするわけですが、その政治を批判するとき、国民は誰も自分が選んだということは意識しません。政治家の責任のみを指摘します。とはいえ、モリカケ問題とか、不倫疑惑とか、最近の問題はレベルが低すぎであり、いくら国民が選んだとはいえ、そこまで国民が責任を負うということはないとは思いますが。

ニューヨーク・タイムズの記者に「日本の世代間配分は異常に不公平になっているのに、なぜ政治問題にならないのか?」と質問されたので、「そういう問題は存在しないことになっているからだ」と答えるしかなかった。厚労省の公式見解では「100年安心」で、年金が破綻するなんて嘘だということになっているからだ(34ページ)

たしかに、今回の総選挙でも世代間配分の不公平というのは論点にはなっていなかったと思います。

今は年金積立金は約150兆円あるが、それを預かるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2015年度は5兆円ぐらい損失を出したようだ。それでも好意的にみて、2011年までの10年間の平均収益率1.4%を想定し、今後の年金積立金の推移を総合研究開発機構がシュミレーションしたのが図4だ。これによれば、賃金が1%上昇すると年金保険料も増えるが、積立金は2038年でなくなる。賃金が上がらないと、2032年に積立金はゼロになり、2050年には年金会計は600兆円以上の債務超過になる。2032年といえば団塊の世代が85歳になるころだから、彼らが年金を満額もらって死んでゆくと、その後の世代はまったく保険料が返ってこない・・・つまり今のまま放置すると、団塊の世代までは逃げ切れるが、それ以下のすべての人が無年金になってしまうのだ(36ページ)

すさまじい世代間配分の不公平ですね。シンクタンクが推計を出しているにもかかわらず、こういうことが問題として議論されたとは聞いたことがありません。こういうことが今回の総選挙で議論されていれば、もう少し結果も変わったかもしれません。

自民党が一貫して掲げてきた唯一の政策は、「自主憲法の制定」である。これは新憲法がGHQに押しつけられたので、日本国民の手で憲法を制定しようというものだ。たしかに憲法を起草したのはGHQだが、これは国会のほとんど全会派が一致して賛成したものだ。「ほとんど」というのは共産党が反対したからだ。1946年6月の第90回帝国議会共産党野坂参三議長は吉田首相に対して「此の憲法草案は戦争一般の抛棄と云う形でなしに、侵略戦争の抛棄、斯うするのがもっと的確ではないか」と質問したが、それに対して吉田は「近年の戦争は多くは国会防衛の名に於て行なわれることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認むることが偶々戦争を誘発する所以であると思うのであります」と答弁し、自衛のための戦力も否定した(47ページ)

もっとも護憲派と思われる共産党が、じつは、現憲法の内容に反対していたとはおどろきです。当時の共産党の主張はいまの自民党と同じに見えます。

憲法を守れ」などというスローガンが、自民党に代わる政権のビジョンになりえないことは明らかだ。自民党の支持率は経済状態の連動しており、外交・防衛問題はマスコミの見出しにはなっても、投票行動にはほとんど影響しない(70~71ページ)

憲法の問題は今回の総選挙でも争点になりましたが、結果は自民党の勝利でした。いま経済は好調ですので、この指摘を踏まえれば、自民党の今回の勝利は当然すぎるとも言えます。逆にいえば、今回自民党に投票した人は、自民党憲法改正を支持したとはいえない、ということも言えそうです。

田中は地域を自分で回り、周辺地域の最貧層に重点を置いて組織化していった・・・新潟三区の33の市町村ごとに支部が置かれ、各支部の得票率に応じて公共事業が配分された。このように各支部ボトムアップの競争原理を導入したことが、越山会の急拡大の要因だった。選挙のときは各支部が競って票を掘り起こし、その結果は開票で明らかになる。それをもとにして田中の秘書による「越山会査定」が行なわれ、支部の成績が公共事業の箇所づけに反映される。こうした利権配分システムは自民党のほかの政治家にも広まり、各地の土建業者が集票構造のコアになった(92~93ページ)

本来国民が投票によって政治家を選ぶはずが、このような方法がとられると、むしろ投票が逆に働いていて、政治家が国民を選ぶみたいになっています。本末転倒なのはあきらかですが、しかし、国民はこれを受け入れており、しかも、新潟三区だけでなく他の選挙区の有権者も受入れ、それが自民党政権を支えています。いまは、財政が赤字ですので、公共事業のバラマキは難しくなっているので、さすがにこの手法は、現在では使えないとは思いますが。こういう逆転の発想をする自民党、本当に強いなあと感じます。

 

けっきょく、自民党が今回勝利したのは、経済がよかったから、ということにつきるようです。普通過ぎる結論ではありますが、しかし、普通であるのでそれゆえ説得力もあります。モリカケ問題など、影響するはずもありません。また、立憲民主党の躍進もありましたが、絶対数でみると、少数野党であることには変わりなく、憲法投票行動に影響しないというこの本の指摘は、ちゃんと結果に現れています。