日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

ダメ上司の頭の中がよくわかる本

「「上司」という病」片田珠美、青春新書、2015年11月第1刷

ーーーーーーーーーーーー

なぜこんなにもダメな上司ばかりなのか?多くの会社員が思うことですが、そんな疑問に答えようとしているのがこの本です。

 

ダメ上司みたいなテーマですと、いかに上司の人間がなってないか、ということを分析するというのがまっさきに思い浮かぶイメージですが、この本のスタンスはちょっと違います。むしろ、そういうダメ上司を産み出す周りに着目しています。もちろん、だからといって周りの責任だ、ということを言っているわけではありません。

このご時世、報道陣に向かって「最後の言葉はオフレコで。書いたらその社は終わりだから」なんて脅しが通用すると思っていること自体、時代錯誤も甚だしい。地元テレビ局が報道しなくたって、関係者の誰かがツイッターでつぶやけば、それだけで瞬く間に拡散していただろう。だが、この大臣がこんな言い方をしているところを見ると、そういうやり方が「けっこうまかり通ってきた」という証明でもある。どんなに傍若無人な振る舞いをしても「これはオフレコだから」なんて一言で闇に葬り去って、許され続けてきたのだろう。そんな「許される環境」があるからこそ「上の人間」はどんどん増長していってしまうのだ(26~27ページ)

大臣を上司に、報道陣を部下に置きかえれば、とても身近に分かります。分析の対象は上司だけではありません。

立場こそ「上司」ではないが、多くの高齢者が特権意識を持っていることも、あえてここで触れておきたい・・・団塊の世代を含め、それより上の世代の人たちは「自分たちは苦労してきた」「日本の高度成長を支えてきた」というある種の自負を持っていることが多い・・・・その一方で、「家族に大事にされていない」「周囲から認められていない」「孤独で、不安だ」などの不全感を抱えている高齢者も多いようだ。そういった不全感を抱えていると、どうしても「もっと自分は大事にされるべきじゃないか!」「特別扱いされて、しかるべきだ!」という特権意識が表に出てしまう(34~35ページ)

また上司に話は戻りますが、こんな興味深い分析をしています。2015年の東芝の不正会計処理を取り上げ、こう述べています。

仮に、社長が本当に「知らなかった」あるいは「指示などしていなかった」としよう。しかしそうなってくると、部下のほうが「上司の求める結果」を先回りして推測し、過剰適応した可能性が高い・・・上司あるいは社長の指示・命令がなかったとしても、そんなやり取りが、体質として、伝統として、文化として会社にあった可能性は高いだろう。そして、いざ問題が発覚すると、上司は責任逃れをして、部下がトカゲのしっぽ切りに遭う。そんな構図ができ上がっているのだ(56ページ)

とても鋭い指摘です。社長が不祥事会見で自分は知らなかったと言うことはありますが、たしかに、東芝のような大企業だと、社長がすべてを知っているということはあり得ませんので、場合によってはそういうこともあるかも、と思っていましたが、なぜそういうことが起こるのか、理由のひとつがよく分かりました。

日本の多くのリーダーが「プレイヤーとマネジャーの違いをわかってない」という話をしたが、きちんとしたマネジメントができないリーダーである上司にとって「自分の価値を保証するもの」とはいったい何だろうか。それは「過去の実績」であり、「経験」にほかならない。つまり、「私はこんなにもスゴイ成績を上げてきた」「オレはこんな修羅場をくぐり抜けてきた」「あの頃は本当にたいへんだった」ということでしか、自身の優位性を保てないのだ(78~79ページ)

昔話をする上司が多い理由が納得です。

さて、筆者の片田氏は精神科医です。この本でも精神科医としての意見を述べていますが、その内容は、その立場を超えてとても有益です。

仮にあなたが問題を告発したり、秘密を漏らしたりすれば、場合によっては大きな社会問題になるかもしれない。でも、それだってあなた個人のせいではないし、遅かれ早かれ、何かしらの形で問題は発覚するものなのだ。もしかしたら、これまでに行なった行為のせいで、刑事責任を問われたり、社会的信用を失ったりすることもあるかもしれない・・・組織や上司はいろんなことを言ってくるだろうが、結局は、その人たちだって自分の保身が第一なのだ。そんな上司の保身のために、あなた自身が犠牲になる必要はこれぽっちもない(111~112ページ)

たしかに。何が自分にとって大事なのか、目が覚める思いです。

もし一対一でのやり取りが不可欠で、「なんとなく危ない感じの話になりそうだな・・・」というときはICレコーダーを忍ばせ、こっそり録音しておくべきだ。多くの人が「そこまでやらなくても・・・」と思うだろうが、上司に一切の期待をせず、自分の身は自分で守ることを考えると、それくらいのことが必要な場面もあるだろう。法律に触れるような重大事ではないとしても、一対一の密室というのは、暴言を吐いたり脅したりするようなパワハラモラハラなどが起こりやすいので相応の防衛策が必要なのだ(129ページ)

とっても現実的なアドバイスです。片田氏は過去に相当苦労されたのかなってちょっと疑ってしまいます。

老害と呼ばれる人たちの多くが「業績に関する責任を担っていない」というのも大きな要因だろう・・・じつはこれは「上司という病」とも密接につながっていて、業績の責任を担っていないから、自分の気に入った人材はそばに置いて、気に入らないヤツは遠くへ飛ばすなんてことが平気でできてしまう。能力や実績を考慮しなくていいからだ(161~162ページ)

老害と呼ばれる人の精神構造を見事に分析し、かつ、それを会社組織のあり方と結びつけて論じています。お見事ですね。精神科医の分析力の威力を実感しました。