日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

ホテルは泊まるだけというイメージを根本から覆されてしまう本

「おひとりホテルの愉しみ」富田昭次、光文社新書、2009年2月初版第1刷発行

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ホテルといえば、観光や出張に行ったときに泊まるところというのが普通のイメージです。ひとりで観光や出張すれば当然ひとりでホテルに泊まりますが、その泊まることの「愉しみ」といわれてもちょっとイメージが湧いてきません。

ひとりきりで何をするのか。結論から言えば、何をしても構わないのである。スパ・エステで”ゴッドハンド”に身を委ねるもよし、日頃の寝不足を癒すもよし。読書に耽るのもいいし、音楽をじっくり聴いてもいい。この際だから思い切ってバーに飛び込み、バーテンダーにお酒のことをいろいろと教わろうと考えるのも悪くない。高い所からボーっと外を眺めるだけでもいいのだ(7ページ)

ホテルにはいろんなサービスや施設があるので、たしかにいろんなことが楽しめます。でも、別に泊まらなくても同じでは?という疑問が残ります。

例えば東京に住んでいる人が東京のホテルに泊まっても大いに気分転換を図ることができ、旅行の気分に十分浸れるのではないだろうか。私の経験から言えば、周囲の風景が変わるだけでも、人の心は躍るものだと思っている。見慣れた部屋の家具から離れるだけで、マンネリズムに陥った生活から抜け出せ、非日常的な雰囲気を楽しめるはずだ(8ページ)

なるほど、という感じです。ホテル泊まること自体が刺激になるということのようです。そうであれば、たしかにホテルで何をするか、というのは、確かに何でもありということになります。

仮に、いま住んでいる部屋よりも狭いビジネスホテルの部屋に泊まったとしても、普段とは違う時間の過ごし方ができると思う。逆に、自分の身の回りのものが必要最小限しかないから、読書に集中できたり、ものごとがゆっくり考えられたりする。それでも、部屋が狭すぎると思ったら、外に出て近くの公園や庭園、美術館、博物館などを訪ねてみたりするといい(中略)ビジネスホテルに泊まり、近くに高級ホテルがあれば、そのホテルのラウンジを利用したり、翌朝、朝食をいただきに出向いていってもいい。そうすれば、ビジネスホテルだって、実は立派なおひとりホテルになり得るのである(8~9ページ)

言われてみれば、これもなるほど、という感じです。ビジネスホテルは基本的なサービスに特化していることが多いのですが、富田氏が言われる方法であれば、十分愉しめます。これだったら、ふらっと土日とかに近くのビジネスホテルに泊まるというやり方もありですね。

ANAクラウンホテルプラザ大阪ではどのようなサービスが受けられるか(中略)専用のクラブラウンジでは無料で飲食が楽しめることが記されている。午前6時半から11時までが朝食ブッフェ、午後3時から5時まではティータイム、5時半から10時まではカクテルタイムとして営業しているという。私のような時間に余裕がある者ならば、入り浸りで利用できてしまうのだ(中略)おひとりホテル楽しむ上で、この専用ラウンジの存在はとても大きく感じられた。身の置き場所が増え、ホテルでの過ごし方に幅が生まれるのだ(29~30ページ)

いくら日常とは違うとはいえ、ホテルの部屋にずーっと閉じこもっているというわけにもいかないこともありますが、そういうとき、このようなラウンジがあるのは心強いですね。ホテル内のレストランでも飲食はできますが、気の向くまま思う存分できるかというとそうもいかず、その点、ラウンジは良いですね。

どんな人が利用しているのかを見てみようと、予定を早めてロビーに下りていった。そこは、24時間無料サービスのコーヒーマシンが置いてあり(中略)コーヒーカップを片手に、備え付けの新聞や雑誌をめくりながら、フロントをちらちらと見ていたら、若いビジネスマン、ビジネスウーマンが次々と入ってくる。外国人や母娘連れの人たちも来た(中略)こういうコーヒーのサービスはいいなと思いながら、ヒューマン・ウォッチングを楽しんだ(中略)ザ・ビー赤坂は小規模なホテルながらも、ロビーでくつろぐことを教えてくれるホテルでもあった(48~49ページ)

ロビーでの人間観察、なんていう愉しみ方は、まったく想像できませんでした。コーヒーのサービスがあれば、ゆっくりとできますので、そういう愉しみもありですね。

22階でエレベーターを降りると、木の香りと柑橘系の果物と思しき香りに鼻をくすぐられた。そして耳を澄ますと、鳥のさえずりや緩やかな環境音楽が聞こえてくる。部屋の鍵を差し込んでガラスのセキュリティ・ドアを開け、前に進むと、今度は森や木漏れ日を描いたような絨毯の廊下が伸びていた。左右の壁には、木の枝を表現した金属性のオブジェが飾られている(中略)客室のドアを開けると、和室のように靴を脱ぐ小空間があり、中へ入ると、奥には琉球畳の部屋が広がっていた。とは言うものの、純粋な和室ではないようだ。部屋には、腰の低いソファやベッドが置かれている。和洋折衷で、両者のいいところを融合させた按配なのである。浴室は?と見ると、たっぷりと洗い場が設けられた、これまだ和洋折衷の浴室だ。さあ、ここがどこだが、お教えしよう。日本の皇室や世界のVIPもよく利用される大阪の迎賓館的なホテル、リーガロイヤルホテルである(54ページ)

ホテル名を述べるときの言い回しに、富田氏の感動の大きさを感じました。文字通り泊まるだけでも、非日常を十分に味わうことができます。当然、料金も相当だと思いますが、しかし、これだけの非日常を味わうことを考えれば、決して高くないと思います。どう考えても、私の場合、いまだけでなく今後も、自宅にこのような空間を作ることは不可能です。富田氏はリーガロイヤルホテルの宿泊料金を紹介していません。もちろん、料金は変更されやすいから、という理由はあると思いますが、それだけでなく、料金水準に関係なくこの空間を体験する価値はあると考えていることも理由の一つではないでしょうか。

ビジネスホテルとは思えないような洗練されたしつらいのロビーが広がっていたのである。フロントの前にはゆったりした感じのソファが置かれ、書棚には洋書が何冊も収まっている。後でパンフレットを見て知ったのだが、それは「カンデオプラザ」と呼ばれる小空間だった(中略)部屋着に着替えたら、まずは二四時間いつでも使えるという「スカイスパ」である。これは、このチェーンの特色のひとつで、最上階に露天風呂付きの展望浴場が設けられている(中略)先ほどの「カンデオプラザ」では各種ビールを用意しているということなので、階下へ降りていき、ドイツ製のオーガニックビールを飲みながら、アメリカ音楽のルーツをまとめた洋書をくつろいだ。そして、外に出て簡単な夕食を済ませると、再び「カンデオプラザ」に落ち着いた。コーヒーの無料サービスも行なわれていた。部屋だけでなく、こうしてくつろげる場所がいくつかあるということに豊かさを感じる(65~66ページ)

愛知県半田市にあるカンデオホテルズの紹介です。愛知県だけでなく、岩手、熊本、静岡、長野、広島、栃木、三重とチェーン展開しているそうです。あくまでもビジネスホテルという位置付けだそうですが、そのレベルを超えているように感じます。

高級ホテルは客室、レストランやバーといった料飲施設、そして宴会場に次ぐ第四の施設としてスパの営業に力を入れ、リラックス機能を高めてきているわけだが、他方、その対極にあるビジネスホテルは、最近どういう状況になっているのだろうか。ホテルには三大要素というものがあって、それは「3B」だと昔から言われてきた。ベッド・バス・ブレックファストのことである。付帯施設の少ないビジネスホテルはまず、これが基盤となる(62ページ)

高級ホテルからビジネスホテルとホテルには種類があり、また、各ホテルのサービス・施設も様々ですので、どうやって選べばいいのか迷ってしまいますが、富田氏はその選ぶ視点を説明してくれています。

 

近年、ホテルはレディースプランで女性に対して手厚いおもてなしを提供しているが(中略)徐々にメンズプランが見られるようになってきてもいるし、まだ発展途上にあるとはいえ、“男性復権”は注目すべき傾向になりつつあるのかもしれない(中略)男性はモノ志向が強く、時間消費型の商品は売れないと言われてきた。たから、それまでの男性向けプランは朝食付きのビジネスプランが主流であった。それでも、仕事抜きでゆっくりホテルに滞在したいという男性が増え始めたのだろう。さまざまな特典を加えたメンズプランが登場してきたのは、そんな声に応えた結果だった(82~83ページ)

ホテルは女性向けサービスは充実しているが男性はないなあと思っていましたが、こういうことだったのですね。「モノ志向が強く」という言い方はかなりオブラートにしていますが、ようは、ホテルでは寝泊りできれば十分、という男性の考え方のことを指しているのでしょう。私はまさにその典型です。

いつものビジネスホテルでなく、予算を若干上乗せして、おひとりホテルをお洒落に愉しみ、ラウンジでくつろいでもいいのではないだろうか。ライトアップされた滝が見える、奥まった場所の客席に座ってのんびりしていただこう(92ページ)

出張の場合、どうしてもホテルは泊まるだけという風に考えてしまいますが、富田氏が述べるように発想を変えれば、出張自体までも楽しみになってきます。

地方のホテルには割安感がある。あまり大きな声では言えないが、首都圏在住の女性は、東京のホテルに泊まるよりも、地方出張があった際に日程を延ばして、地方都市でおひとりホテルを楽しんだ方がお得だと思う(158ページ)

これも出張自体を楽しむアイデアですね。出張、観光抜きで泊まること自体目的とするときでも、東京都内ではあく、関東の近県を選べば、割安感もあり、また、交通費もそれほどかかわず、お得かもしれません。

私の場合は、夕食代を除き、また特別な例外を除いて、一泊15000円から2万円前後を無理のない予算として設定し、おひとりホテルを楽しむようにしている(中略)フォーシーズンズ丸の内の朝食代は、サービス料込みで4710円と少々高額だが、ドーミーイン東京八丁堀の宿泊費用は11000円で、予算内に収まっている(中略)ホテルサードニクス東京に宿泊したときは、早朝のビジネス街を散歩しながらホテル西洋銀座へ行き、そこで朝食を取った。こちらの場合は、宿泊費が12800円、朝食費が3927円で、合計16727円だった(138ページ)

ホテルの愉しみはわかるけど先立つものがというのは現実であり、とても重要ですが、富田氏はその点についてもアドバイスを具体的にしてくれています。このぐらいの金額であれば、年数回とか、あるいは、月1回程度することができそうです。

おひとりホテルでは一種の企画力も大切なのだということを言っておきたいので、記すことにした。ただのんびりと、という過ごし方ならば話は別だが、限られた時間を有効活用したいと考える人にとっては、どの順番で何をするかを計画することは肝要だ。近いところだからいつでも行けるという心の持ち方でいるといつまでたっても行けないものだし、私自身、旅行先でいい加減な予定を立てて、見逃した施設や名所がいくつもある。費用をかけておひとりホテルを楽しむときにこそ、日頃望んできたことを実行に移すべきであろう(141ページ)

とても大事なことですね。ホテル周辺を観光するときもそうですが、それだけでなく、ホテル内で様々な施設・サービスを利用するときも、利用時間などを調べて順番をよく考える必要がありそうです。

日光金谷ホテルのバーで、こんな話を聞いたことがある。週末ともなると、都心から車を飛ばしてやって来て、バーでくつろぎ、一夜をホテルで過ごしビジネスマンがいるというのだ(中略)横浜ロイヤルパークホテルのバーでは「女性のお客様がボトルをキープされまして、時折り、お仕事の帰りにおひとりでお見えになるんですよ」という話を聞いた。セルリアンタワー東急ホテルでは、バーデンダーを相手にカクテルを飲み比べるおひとり女性を見たことがある。ホテルのバーはおひとりでも安心して利用できるだけに、自分の趣味に合ったバーがあれば、泊まらなくても楽しめるおひとりホテルの絶好の拠点になるだろう(124ページ)

たしかに、観光や出張でもないのにホテルに泊まるというのは、ちょっとめんどくさいところがありますが、このような泊まらずにホテルを愉しむというのは簡単にできてとてもいいですね。