日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

自分を変えたいと思ってもこれまでぜんぜん変われなかった方に読んで頂きたい本

なぜ、あの人の頼みは聞いてしまうのか?-仕事に使える言語学(著者:堀田秀吾)、ちくま新書、2014年2月第一刷発行、

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この本については、前半ということで一回紹介しています。

 

mogumogupakupaku1111.hatenablog.com

 

A:ことばが人の記憶・認識を変える

B:ことばが人の意欲・行動を変える

前半ではこの2つについて紹介しました。こんかいは後半です。ことが自分にとってどのような影響があるのか、ということを紹介します。

 

C:ことばが自分の認識・行動を変える

ことば使いと性格には、深い関係があります。たとえば、聞いている人が赤面してしまうようなことを平気で言える人は、羞恥心が麻痺していると言えます。横柄なことば使いをしていると、横柄な人になっていきます。でも逆に、ゆっくり話す人になれば、所作もゆっくりと落ち着いた人になっていくでしょう。優しく丁寧に話そうとすれば、優しく丁寧な人になっていき、自信を持った話し方をするようになれば、自信がみなぎってくるでしょう。一定の性格や人物像や役割などのイメージが密接にからんだことば使いをすることによって、そういう人間になりきることができるのです。役割性格と役割語という原理を利用することで、望む人物像や役割が手に入れられるわけです(64ページ)

自分を変えるのは自分しかいません。そうはいっても、なかなかできないということはよくあることです。変えたいけど変われないと悩んでいるわたしのような人間にとって、この話は、天の助けとも言えるでしょう。でも、そもそもどんな役割を演じればよいのか?という疑問が次にでてきます。そんなの人それぞれだから自分で考えるしかない、という声が聞こえてきそうですが、この本は、それについても答えてくれています。

「プラントハップンスタンス(計画された偶然)」という、スタンフォード大学の研究者ら(Mitchell,Levin & Krumboltz,1999)によって発表された考え方があります。この理論が主張しているのは、キャリアにおける成功は、失敗も含め、たくさんの偶然の出来事や経験の上に成り立っていて、そういった出来事や経験は、一見偶然に見えるかもしれないが、元をただせば、自分の行動が招き入れている、つまりもともと計画されていたものなのだということです。言い換えれば、そういう偶然が起こるように行動することがキャリア形成の上で大事なのだと言っているのです。そして、予期せぬ出来事をたくさん経験し、上手に昇華させていくための心構えとして、次の5つを説いています。①常に機会を求め、②あきらめないで努力して、③成功すると自分に言い聞かせ、④固執しないでフレクシブルに、⑤リスクを恐れず挑むこと(中略)この5つのことを実践するきっかけを得るのに効果的なのは、ことばを使って自分を動かすことなのです(75~77ページ)

この①~⑤ができることは、誰もが望むことです。それはいいのですが、問題は、ことばとの関係ですね。どういうことばを使うのか、それこそそれぞれが考えるしかないのですが、堀田氏は自身の使っていることばを気前良く、披露してくれています。

①常に機会を求め=「飲みの席には這ってでも行け」「ノーと言わない大人になりなさい」 ②あきらめないで努力して=「あきらめたらそこで試合終了ですよ」 ③成功すると自分に言い聞かせ=「できるかできないかじゃない。やるきゃらないかだ」 ④固執しないでフレクシブルに=「階段を上がれば見える違った景色がある」 ⑤リスクを恐れずに挑むこと=「書けば官軍」「やらない後悔よりやる後悔」(77ページ)

「書けば官軍」というのは「勝てば官軍」ということばの変形版ですが、これは、堀田氏が研究者であるがゆえのことばですので、一般的には結果を出せばという意味になります(80ページ)。それ以外は、研究者以外の職業の方にもそのまま十分通じるものばかりです。

 

D:ことばで自分の意思・思いを人に伝える

ことばで伝えるなんて当たり前すぎる、と言われてそうですが、もちろん、文字通りの意味ではありません。

2つ以上の言語を話すバイリンガルたちが、言語の切り替えを行なうことを「コード・スイッチング」と呼びますが、東教授は、この考え方を少々広げて、方言と標準語などの切り替えなども含めて「コード・スイッチング」と呼んでいます。そして、この切り替えをうまく使いこなすと、人の心に響くというのです(中略)たとえば、政治家の東国原英夫氏が、宮崎県知事選の演舌の中で「どげんかせんないかん」と、宮崎の方言を使うことによって県民の心をつかんだという有名な話があります(中略)選挙演説というソトのことばである標準語で話すのが当たり前の状況で、突然、宮崎県民にとってのウチのことばである宮崎弁を差し挟む、つまりコード・スイッチングをする。これにより、東国原氏は、ぐっと有権者に歩み寄ったイメージ、ウチ側の人間として宮崎県民のみなさんと一緒にやっていくんだという雰囲気を作り出すことに成功したわけです。また、ウチのことばを使うことは、素の自分をさらけ出すということにもつながります。東国原氏は、ウチのことばである宮崎弁を使うことにより、うわべではなく、素の自分が本気でそう思っているのだというニュアンスを出すことにも成功しているわけです(中略)これは、単なることばの「使い分け」ではなく、ソトのことばからウチのことばに切り替えたという変化自体が、相手の心に響く大きな要因になったということです(92~93ページ)

東国原氏が演説で丁寧にいくらしゃべっても、「どげんかせんないかん」という言葉ほどに、宮崎県民にその思いが伝わることはなかったでしょう。使い方ひとつでこんなに変わってしまうほどのちからがことばにはあります。日常生活で使えるのか?という話にいきます。

たとえば、仕事のメールで、ひとしきり形式的に用件を伝えたあと、最後に「最近、美味し刺身の店を見つけました。近いうちに一緒に行きませんか?」や「〇〇さんはビール通だとうかがっております。弊社の近くに全国各地の地ビールを常時30種類も取り揃えているお店がありますので、ぜひ今度ご一緒しましょう」と一言添えるだけで、グッと形式的な部分が和らいで、温かさを感じるメールとなります。こういう切り替えのことばを上手に差し挟むことで、相手の心を引きつけることができるでしょう(96~97ページ)

これは仕事の場合ですが、プライベートでも十分応用できそうです。相手との間に距離を置くことばを使ったり、逆に狭めることば使ったりと、そのときそのときで使い分けをすることで、相手との距離感を調節できます。どちらかが無標、どちらかが有標となりますが、自分の望む距離感を表すことばを有標とするように、ことばを使えばよいのでしょう。

メールで人に伝えるときは、さらに気をつけなければいけないことがあります。

メラビアンという心理学者の説(1971)によると、感情を伝えるのに、言語情報が担う役割は7パーセント、口調などの聴覚情報が38パーセント、見た目などの資格情報が55パーセントだとされています。文字は、このうちの言語情報にあたります。文字だけでは十分に感情を伝えることができないということです(136~137ページ)

こう書くと、だからメールはだめなんだ、やはり直接会って話さないとだめだ、という声が聞こえてきそうです。そのとおりだと思います。でも、現実、そのようなことは無理でしょう。そこで、メールという限られた手段でどうやって上手に伝えるのか、ということが問題となります。絵文字、顔文字、スタンプというのは、文字の足りないところを補ってくれるツールです。これが使えればそれで良いのですが、いつも使えるとは限りません。たとえば、取引先に送るメールで使えるのか、と考えると、話は簡単ではありません。

カタカナには「冷たい」「外国」というニュアンスを感じ取れるというアンケート結果が出ています(143~144ページ)

ひらがなは、カタカナや漢字に比べて、丸みを帯びたパーツが多いですから、目にかわいく映りやすいのです(149ページ)

 日本語には、漢字、ひらがな、カタカナという3つの文字があり、これを組み合わせてメールを作成します。もちろん、漢字やカタカナを使うことが決まっているところは使うしかないのですが、漢字、ひらがな、カタカナどれでも使えるというときもあります。そんなとき、漢字やカタカナにはないひらがなならではの特徴を利用して意図的に使うことで相手との距離感を縮めることができそうです。ときどき、「はろーきてぃ」とあえてひらがなで書いてるのを見ますが、まさにその効果を狙っているのではないでしょうか。あと、文字を使って伝える以上、これも気をつける必要があります

メールでしたら、口頭で直接話すときに失われる情報を補うべく、文言を増やすなどの努力を惜しまないことが大切です(167ページ)

あたりまえ過ぎるのですが、意識しないと意外とできません。口頭であれば、言語以外の情報でも伝えられますので、口頭で述べる内容に多少欠けているところがあっても何とかなりますが、その内容をメールで文字にしただけではちゃんと伝わらないことは、とうぜんと言えばとうぜんでしょう。

人間関係のトラブルの多くは、コミュニケーション不足による誤解です。ことばや話合いが足りなかったり、伝え方が適切でなかったりした場合に起こります。コミュニケーション不足という状況を作り出さないために大事なのは、なにかと面倒くさがらないことです(167~168ページ)

コミュニケーションの基本中の基本です。これぐらい書かなくても分かるだろう、みたいな感覚はダメということです。わたしなどはついついやってしまうのですが・・・。