日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

寝る暇をおしんで勉強や仕事をしないといけないぐらい忙しい方にぜひ読んで頂きたい本

睡眠のはなし(著者:内山真)、中公新書、2014年1月発行、

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睡眠、誰もが毎日欠かさずする必要のあることで、誰もが快適で十分な睡眠を望んでいます。著者の内山氏は、精神神経学、睡眠学、時間生物学を専門とする専門家です。内山氏はこのように睡眠の大事さを語ります。

 

1993年のアメリカ政府諮問委員会報告書「目覚めよアメリカ:国家的睡眠の危機」では、スリーマイル島原発事故(1979年)、アラスカ沖のタンカー座礁による原油流出事故(1989年)などの多くの甚大な事故に、気力に頼った無理なスケジュールと睡眠不足による判断ミスが強く関係していたことが示されている(ⅳページ)

 

睡眠不足は自分自身の問題だけではなく、他の人にも大きな影響を与えてしまうということですね。ますます睡眠は重要です。ちょっと余談ですが、アメリカ政府の報告書は、睡眠が重要という主張のはずなのにタイトルが「目覚めよアメリカ」というのは、逆説的というか、ウケ狙いなのか(笑)、なぜこのネーミングなのか、ちょっと謎です。

 

この本では適切な睡眠時間は何時間なのか、という以前から誰もが感心を持ち、それでいてはっきりと答えのでていないテーマについても述べていますが(30~32ページ)、そもそも、睡眠はなぜ必要なのか、という根源的な質問に答えています。

 

睡眠とは、身体が休む時に、脳の活動をしっかり低下させ休養させるシステムなのだ(中略)活動のために体内温度を保って生活する動物が体内の温度を下げ、脳の温度も下げ、これを強制的に休ませることに睡眠の意義があると考えていいだろう(7~8ページ)

 

「なぜ睡眠が必要なのか?それは眠いからだ」というと、「なぜ山に登るのか?そこに山があるからだ」と同じような問答に聞こえ、意味のある話にはおもえませんが、内山氏の説明を聞くと、眠いとか眠くないという本人の意識の問題ではないということがよく分かります。脳が生きるために必要ということなのでしょう。このことから、よく言われる寝る前に風呂に入って温かくした方が良いということが、なぜ正しいのか、という理由もわかります。内山氏はこう述べる理由がよく分かります。

 

寝る前に寒いと、手足の末梢血管が縮んで熱を逃がすまいとするため、寝つきが悪くなる。冷え性で手が冷たくなりやすい人は、熱を逃がすのが下手であるため寝つきが悪くなりやすい(39ページ)

 

眠いというのは、本人の意識の問題ですが、脳が休みたいというのは本人の意識とは別です。そう考えると睡眠というのは、とても本能的、生物的な欲求とも言えると思います。その意味で、わたしたち人間は、これだけ進化した社会に住んでいても、なお本能にコントロールされているところがあると言えます。内山氏のこの話はとてもおもしろいです。

 

クマなどの動物は、秋分の日から冬至に向けて、冬眠のためにたくさん食べて脂肪を蓄積するとともに、次第に眠る時間が長くなって動きが不活発になる(中略)人間にも、冬眠する哺乳類と同様の身体機構が生まれつき備わっている。食欲の秋というように、多くの人が穀類や芋類などの食べ物に対する欲求が増えるのを経験する。枯葉の散るのを見て心を動かされるように、秋は感傷的になりやすい。本人の感じ方、つまり自覚的には物思いだが、他覚的に周りから観察すると単なる不活発状態ともとれる(37ページ)

 

なぜ食欲の秋なのか?食欲の春、食欲の夏となぜ言わないのか?秋は春や夏に比べて食べ物がおいしいと言えるかというと、そんなことはありません。よく考えるとなぞでしたが、内山氏の説明を聞くと、なぜ秋なのかよくわかります。同時にそれが人間としての本能のあらわれであるということも分かります。

 

みなさんは、体内時計、ということばを聞いたことがありますか?時計とかは見ていないんだけど、感覚的にいま何時か分かる、その理由を、体内時計が教えてくれる、という言い方をすることがあると思います。これって、じつは、科学的にも認められているんです。

 

体内時計の細胞では、時計遺伝子というタンパク質の設計図に基づいて時計機能を担うタンパク質が製造される。この細胞内での一種の化学反応が24時間周期でゆっくりと変動し、直接1日という時間をとらえる。この時、タンパク質の製造量が時計の分針の役割をする(45~46ページ)

 

体内時計はたんぱく質の量である、ということです。これからは自信をもって体内時計のことを信じてよさそうです。 

先ほど睡眠とは脳を休ませることだと紹介しましたが、睡眠の意義はこれだけではありません。

 

眠っている間に、何かのプロセスが働いて技能や記憶の獲得向上を支えている。眠りはただの脳の活動低下ではないのだ(58ページ)

睡眠には、日中の体験に伴う記憶や日中に練習した技能を定着する働きがある。ショッキングな出来事に遭遇した晩によく眠ると、これが必要以上に強く心に植えつけられてしまう可能性がある(63ページ)

 

睡眠中に脳は休んでいるだけではないということですね。プラスマイナス両方あるようですが、勉強したり何か学んでいるときはしっかり眠り、いやなことがあったときはあえて睡眠不足にする、というのが効果的なようです。たしかに、いやなことが昼間あるとなかなか寝付けないということはよくありますが、そんなときは無理して寝てはいけないということにもつながります(61~62ページ)。

 

さいごに、睡眠とは切っても切り離せない、夢の話です。夢の内容は、実際にあったこととまったく無関係というわけではないけど、そうはいっても実際とは違うということがあります。たとえば、夢に出てくる人は、実際に自分の友達の異性なんだけど、なぜか夢の中ではその人と結婚していて、それに何の違和感も感じないし、むしろ、ほんとうにそれを楽しんでいる、とかいうようなかんじです。内山氏は、そんな夢のメカニズムをこう述べています。

 

脳に蓄えられた過去の記憶情報が読み出され、記憶の主に情動的な側面が体験され、ここに理性的なその他の記憶や体験との照合が行われない状態と考えられる(中略)過去の記憶情報からそのイメージを再生して、夢におけるあたかも見ているようなありありとした体験を作り出すのに役立っていると考えられる。覚醒中の脳は、外部から入ってくる視角、聴覚、触覚などの知覚情報により、各部位が相互の連絡を保ちながら外界での出来事を認識し、その意味をつかむように活動している。レム睡眠中は、脳が部位によってばらばらに活性化あるいは不活性化され、これにより覚醒している時とは違った夢独特の体験を作り出す(中略)夢というのは、レム睡眠中枢により作られた、覚醒中とは異なるちぐはぐな脳活動の状態を私たちがまさに体験していると考えたらよい(70~71ページ)

 

夢について、実際と当たっているようなでも当たっていないような、というなんともいえない距離感が生じる理由を、見事に説明してくれています。

さいごに、内山氏が睡眠を大事にしていることがよくわかる、内山氏自身のエピソードを紹介します。

 

「昨日はよく眠れたかい」「よく眠れたよ」。私たちの文明が可能にしてくれた、安心して生きていることを表す、このあいさつが私は好きだ(185ページ)

 

周りの人の睡眠を気づかっていて、とてもあたたかみのある言葉です。同時に、睡眠がわたしたちにとってどれだけ大事かということも教えてくれます。