日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

「時間がすべてを解決する」ということわざを信じられない方に読んで頂きたい本

どうして時間は「流れる」のか(著者:二間瀬敏史)、PHP新書、2012年1月第一版第一刷発行、

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どうして時間は「流れる」のか?タイトルどおりですが、そう聞かれたらどう答えますか?正直、よく分からないし、そんなこと考えたこともない、というのが大方のかたの答えではないでしょうか。

 

著者の二間瀬氏は、時間や空間に直接関係する研究をする専門家ですが、二間瀬氏によると、「まだ最終的な答えが出ているわけではありません」(4ページ)とのことですが、「時間と重力、時間と宇宙の深い関係」(4ページ)が存在するそうです。どういうことでしょうか?

 

すべての時間の矢の原因は「宇宙がエントロピーの低い特殊な状態から生まれ、適度な速さで膨張してきた」ことに尽きるのです(166ページ)

 

結論としてはこうなるようですが、ちょっとまだよくわかりません。そもそも何を言っているのかすら分からないというぐらい、難しい。

 

時計は時間で測るが、世の中にあらゆる時計がなくなったとしたら、時間は流れるだろうか。もちろん時間は時計の存在に関係なく流れるに決まっている。それでは、時計だけでなく宇宙の中のあらゆる物資がなくなったとしたら、どうだろうか。空っぽの宇宙には、何の変化も起こらない。何かが変かするからこそ、時間の流れがわかるのだから、空っぽの宇宙には時間は流れないと考えることもできる(90ページ) 

 

19世紀のオーストリアの哲学者にして物理学者であるマッハの主張です。先ほどの結論がちょっと分かりかけてきました。「わたしたちは、何をもって時間の流れを感じるのか?時計のあるなしは関係ない。そうすると、何かが変化することを時間の流れとわたしたちが感じていることになる、つまり、時間の流れとは物資の変化であると言うことができる。」というふうに、わたしはマッハの主張を理解しました。では、時間の流れを感じる物資の変化とはなんでしょうか?という話になります。この本では、それを「時間の矢」として、4つの矢を紹介しています。

 

熱の移動を伴う現象は、一般には元に戻らない、非可逆現象です。そこで、熱が関係する非可逆現象によって現れる時間の矢を「熱力学的時間の矢」とよびます(45ページ)

 

これは、熱いお湯が放っておくと冷めていきますが逆はあり得ない、という矢をいいます。

 

波が広がっていく方向が時間の「未来」の方向になります。このように、波の伝わる方向によって決まる時間の矢を「波の時間の矢」といいます(46ページ)

 

池の中に生じた波は周りにひろがっていきますが逆はあり得ない、という矢をいいます。

 

「進化」も代表的な非可逆現象といえるでしょう。そこで、進化によって決まる時間の矢を、本書では「進化の時間の矢」とよぶことにします(47ページ) 

 

 

生物の進化、科学の進化、思想の進化、あらゆる進化は一方方向です。

 

宇宙は永遠に膨張を続けると考えている研究者が多いようです。そこで、宇宙が膨張していく方向を「宇宙論的時間の矢」とよぶことにります’(51ページ)

 

宇宙が膨張という一方方向にしか進まないのであれば、これも不可逆現象です。4つの矢を紹介しましたが、なぜこの4つが時間の矢になるのか?

 

過去から未来への一方向の時間の流れは、飛んでいく矢や流れる川に例えられ、「時間の矢」とよばれます。そして、時間が過去から未来に流れるのは、非可逆現象が存在するからです(43ページ)

 

マッハが言う、時間の流れをわたしたちが感じるのことのできる物資の変化とは、それが一方向にしか流れない変化である必要があるということです。そして、物資の変化の中で非可逆現象が認められるのがこの4つということになります(この本では、ほかに「意識の時間の矢」も紹介していますが、これは物資の変化とはちょっと違うようです。)。それでは、この4つの矢をどうわたしたちは理解したらいいのでしょうか?それが、なぜ宇宙の話になるのでしょうか?

 

もっとも基本的な矢は「宇宙論的時間の矢」です。そして、宇宙論的時間の矢から、熱力学的時間の矢と進化の時間の矢の存在が導かれます。さらに、熱力学的時間の矢から波の時間の矢が導かれるのです(58ページ)

 

キーワードは「エントロピー」です。熱力学的時間の矢、進化の時間の矢、波の時間の矢、いずれもエントロピーの高低の違いがそれが生まれる原因となっています。

 

私たちの身の回りで起こるエントロピー増大の現象は、太陽や超新星爆発でできるウランなどの低エントロピー資源が存在することが原因でした。つまりこれらの低エントロピー資源をつくっているのは、星などの天体です(中略)私たちの体をつくっている炭素や酸素といった物資も、元をだどれば、はるか昔に星の中でつくられたものなのです。星はほとんどが水素からできていますが、中心部の核融合反応でヘリウム、炭素、窒素、酸素、鉄などの元素がつくられます。それらが超新星爆発で宇宙空間にばらまかれ、それを材料に地球が生まれ、晴明が生まれたのです。このように、あらゆる現象を元にたどっていくと、どんなことも宇宙の出来事に、究極的には宇宙の始めの現象に行きつくことになります(167ページ)

 

宇宙が生まれ、そこから低エントロピーの状態が発生し、エントロピーのさまざまな変化が物資の変化となり、それをわたしたちは時間の流れとして捉えているということです。言い換えれば、宇宙が生まれた瞬間に、時間の流れが始まったということになります。

 

とても難しいテーマです。科学的にはこのような説明であったとしても、別の学問からは別の説明も可能です。

宇宙の始まりから時間の流れが始まり、わたしたちもいまその流れの中にいると思うと、宇宙とわたしたちのつながりを感じることができ、日常のさまざまなこと(とくにイヤなこと)など、時間の流れの中では取るに足らないことと思えます。

よく、時間がすべてを解決する、ということが(ことわざ、格言として)言われますが、時間が宇宙の始まりから流れているのであれば、それもとうぜんかなとなぜか納得してしまいます。