日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

AV出演強要問題を知る上では欠かせない本です。

AV出演を強要された彼女たち(著者:宮本節子)、ちくま新書、2016年12月第一刷発行、

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AV出演強要問題。多くの方が、いちどは聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

同時に、出演を強要されたといっても、なぜその前に出演を断らないのだろうか?契約書にサインしているのに、本当に強要されたのだろうか?といった疑問を持つ方も多いと思います。わたしもそう思っていました。しかし、この本を読んでみると、とてもそういう疑問は的外れなのだなあと実感します。

 

女性を街中でスカウトするスカウトマンは、海千山千、若い女性をうまく自分のペースに乗せることなど楽勝です。

 

夕方早くから始まったこの勧誘は夜遅くまで続き、Aさんは終電時刻が気になった。終電を逃せば、渋谷の繁華街で夜を過ごさなければならないが、そんなことはしたことがない。次第に、帰れないのではないかという不安が増してくる。Aさんは徐々にこの不安と疲弊とで思考力を奪われた状態になっていった。Aさんの消耗を見計らって、スカウトマンは契約書を出した。「これに署名してくれれば、あとは僕がいいようにするから。」ついに、Aさんは根負けし、最後の頃にはともかくこのしつこい勧誘から早く逃れたいという気持のほうが勝って、契約書に署名捺印してしまったという(24~25ページ)

 

夕方がたとえば、午後5時とすると、終電近くまでということは、約6時間か7時間ぐらいでしょうか。Aさんと同じ立場になったとき、スカウトマンから逃げ切る自信がありますでしょうか?この本には、これ以外にも、スカウトマンの手練手管がいろいろ紹介されています。

 

こういう女性のためにも、著者の宮本氏のような被害女性を支援する人の存在はとても大事。でもわたしは、そういう対策を充実させればそれで問題解決か?というとちょっと疑問を感じます。

 

スカウトマンが悪いのはたしか。相手が若い女性ということで、その経験のなさ無知に付け込んでいるのは悪い。一方、彼女たちは18歳以上。つまり、成人であり大人です。大人なら嫌なものは嫌ときっぱり断ることも求められますが、実際はできていない。

また、仮にその場の雰囲気で契約書にサインしてしまったとしても、公序良俗に反する契約は無効とする(民法90条)、表示した意思が真実の意思と異なっていた、つまり、錯誤があった場合の契約を取り消し(民法95条)が認められています。なので、彼女たちはサインした後に、これを主張することもできます。自分で主張することは難しくても、法律的にそういうことが可能なのか、弁護士に相談するということもできます。でも、被害にあっている女性は、こういう法律知識も知らない。だから、いいようにやられてしまう。

 

そうすると、そもそもそれまで学校で受けてきた教育は何なのだろうか?と疑問に感じます。実社会に出たときに自分の力で生き抜くことができるのが大人であり、学校はそれに必要な知識や経験を与えるところなのに、ぜんぜんできていない。成人年齢が引き下げられましたが、あれは本当に良かったのか?と疑問を感じます。

このAV問題についていえば、こんごの被害防止のためにも、この本を全国の学校に配って読んでもらう、ということが大事だなあと思いました。

 

それだけでは話は終わりません。被害女性を支援したりサポートをしっかりし、学校で教えれば、AV問題は解決できるとしても、正直いって、この程度の知識もないようでは、また何かの被害にあってしまうような気がする。いくら取り締まりや予防を強化しても悪い奴はいくらでもでてくる。まずは、自分の身は自分で守るということが絶対必要。

中島義道氏はこう指摘します。

 

彼らは、安全を求めながらみずからは何もしない。その過酷な仕事を、国家に政治家に官僚に企業家に・・・つまり強者に期待する。強者が自分たちのために安全を確保することは義務なのだ。そして、それができない強者を嘲笑し、足蹴にし、罵倒し、追放する。なぜ、これほどの暴力が許されるのか?答えはすこぶる簡単である。特別何も持っていない、小さな幸福で満足している、平凡で従順な自分たちが、共同体において唯一「正しい」者だと教育(洗脳)されているからなのだ(善人ほど悪い奴はいない ニーチェの人間学(著者:中島義道)、角川新書、2010年8月初版発行、2016年8月6版発行。50ページ)

 

この本を紹介している記事はこちらです。

 

mogumogupakupaku1111.hatenablog.com