日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

銀行からローンするとき、何か金融商品を買うとき、決める前に一度は読むべき本

サブプライム問題とは何か アメリカ帝国の終焉(著者:春山昇華)、宝島社新書、2007年11月第1刷発行、2008年4月第8刷発行、

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サブプライム問題といえば、2008年のリーマンショックの原因となったアメリカの不動産ローンです。もう10年前の昔の話ですし、いまさらという感じもしないでもありませんが、歴史は繰り返すという言葉もあります。

 

サブプライムローンは当初の目的とは異なった方向に進んでいった。悪質な金融機関がこの仕組みを食い物ににしたのである。日本のサラ金同様、最終的に低所得者が月々の収入では到底返せないような支払い条件でローンを組ませていった。これは、日本でステップ返済といわれる返済方法と同じで、当初2年程度の返済条件を軽くして融資するもので、据え置き期間経過後は、返済額が急増する形が多い(12ページ)

 

アメリカの話をしているはずですが、「サラ金」、「ステップ返済」というように、日本のローン市場でもおなじみの言葉が出てきます。まさに歴史は繰り返されています。日本との関係では、こんな話もあります。

 

「問題化した多くの人は、生活費を捻出するために、値上がりした不動産の価値を担保に金を借りて、束の間の消費を楽しんだ。サブプライムローンの手数料や金利は、日本のサラ金と同様に劣悪である(中略)」(56ページ)

 

アメリカの住宅都市開発庁のサブプライムローンについてのレポートです。サブプライムローンサラ金と同じということです。サラ金なんてよく知っているなあと驚きます。サブプライムローンという言葉や住宅ローンと聞くとイメージしづらいですが、サラ金と同じと言われれば、いかにサブプライムローンがひどいかということがよくわかります。日本でもそう報道してくれればよかったのに。ちなみに、ここでも日本が出てきます。

 

NINJAローンとは、

・No Income(収入がなくてもOK!)

・No Job & Asset(働いていなくてもOK!無一文でもOKです!)

の頭文字をとって名付けられたものだ(77ページ)

 

こんなところで、忍者の名前を使わないで欲しいと思います。でも、この内容、サラ金と同じですね。これはわたしの憶測ですが、頭文字がNINJAになったいるところに、偶然とは思えない一致を感じます。つまり、一見、とても良いローンに見えるが、隠された欠陥があるという意味で、隠密に行動するNINJAとの共通点を感じます。

 

アメリカの住宅ローンの多くが、「債権」といて第三者に売却されていることだ(中略)金融機関はローン債権を売却して得た資金を、また別の住宅購入者に住宅ローンとして貸す。この方法を繰り返せば、少ない元手資金を何重にも使えるので、手数料収入はものすごい勢いえ増えていく。また、住宅ローン契約時の説明義務違反や詐欺などの違法行為が証明されても、売却された住宅ローンの譲受人(持ち主)は、「善意の第三者」として扱われる(中略)だから、略奪的貸付契約における違法行為を誰かが証明しても、サブプライムローンの借入者は、現実の住宅ローンの譲受人に対して、無効を訴えたり、支払条件の緩和を交渉するといったことができない(16ページ) 

 

金融技術の発達したアメリカらしい現象です。例えば、ステップ返済という条件をちゃんと説明しない住宅ローンを受けた人がいて、説明がなかったことを理由に支払条件の緩和を後ほど求めても、ローン債権が転売されていた場合、一切認められないということです。理屈はたしかにそのとおり。でも、なんか不合理を感じます。けっきょく、弱い人が損してしまう仕組みという点に。

 

サブプライム問題が世界中に深刻な影響をもたらしたのは、サブプライムローンを組み込んだ金融商品が世界中で販売され、かつ、それに高い格付けがつけられていたことです。当時、格付けの妥当性がだいぶ議論になりました。

 

そもそも格付けを依頼した証券会社と格付け機関が癒着していたのではないかという非難も多い(中略)だが、一番妥当と思えるのは、「格付けの分布」についての指摘である。つまり、トリプルAが全体の何%、ダブルAが何%・・・といった分布である。最高位の格付けの取得は困難であるにもかかわらず、住宅ローンを証券化した投資商品に対いしては、トリプルAが大盤振る舞いされていたのではないかというものだ(152~153ページ)

 

癒着うんぬんというのは、憶測、噂にすぎないと言えますが、分布は客観的なデータに基づくものですから、説得力があります。この分布をみると、癒着説も根拠のある話となります。そんな格付けをした格付け機関に責任があるのでは、というのが一般的意見ですが、どうも、格付け機関の主張は違います。

 

格付け機関のトリプルAというのは何の責任もないひとつの参考意見というのが法的な位置づけだ。したがって、仮に格付けがおかしいといわれても、責任はない。投資の責任はあくまでも投資家の自己責任であって、格付け機関の知るところではない」という。そこで思い出すことがある。00年のITバブル崩壊に続いて起こったエンロン社などの不正会計疑惑だ。当時、世界最強の会計事務所だったアーサー・アンダーセンが、会計粉飾や証拠隠蔽に関与していたことが発覚。そのために同社の信用は失墜し、02年に解散へと追い込まれた。会計事務所は、納税や投資家が投資をする際に必要な情報を、正確に提供できるようにするために、法的責任を負っている。だが、格付け企業であるS&Pムーディーズなどには、「法的責任はない」というのが証券界のコンセンサスになっている(154~155ページ)

 

最初に紹介した格付け機関の主張だけ読むと、そうかなあとい気がしてしまいます。投資は自己責任というルールがあります。でも、会計事務所の話と較べると、違和感を感じます。結局、格付け制度、格付け機関というのは、言い訳をするためにある制度ということでしょう。債券の発行企業や証券会社は格付け機関の格付けを信用したと言い、格付け機関は信じるかどうかは自分の責任ではないと言い、誰も責任をとらず、けっきょくは、損失を被った投資家の自己責任という言葉で片づけられてしまいます。法的にはまさにそのとおりで、つくづく、金融業界というのは頭がいいなあと感じます。もちろん、褒めているわけではありません。

 

麻生太郎財務相は30日の閣議後会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、米格付け大手、ムーディーズ・インベスターズ・サービスから最上位の格付け「Aaa(トリプルA)」を取得したことについて、「(南アフリカの)ボツワナより日本の国債が低いと出したのは確かムーディーズじゃなかったか。その程度のところ(が出した格付け)だと思っている。他に興味はない」と、一笑に付した。

 ムーディーズは2002年5月、景気悪化などを理由に日本国債の格付けをAa3からA2に2段階引き下げ、ボツワナより下の格付けにしたことがある。(産経新聞。2017年6月30日) 

 

その上でこの記事を読むと、麻生大臣はよく分かっているのだなあと感じます。いま、公文書改ざん問題で責任を追及されていますが、この発言を読むと、麻生大臣にはもっと財務大臣として活躍してほしいと思います。

 

アメリカのサブプライ問題は日本のサラ金と同じというのは、歴史は繰り返すという意味でもありますし、さらに言い換えると、金融機関というのは、日本でもアメリカでも同じで、いかに個人から金をとるかしか考えていないということですね。さいきん、仮想通貨の件で、KISSの法則を考えてしまいましたが、あらためて、個人は、「KISSの法則」を守らないといけないつくづく感じます。

 

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