日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

スピーチライターに興味がある人だけでなく、仕事で周りの人に説明・説得をしないといけない人に読んで頂きたい本

スピーチライター 言葉で世界を変える仕事(著者:蔭山洋介)、角川oneテーマ21、2015年1月初版発行、

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スピーチライターというと、政治家とかの演説の原稿を政治家に代わって作成する人というイメージです。スピーチライターと聞いて最初に思い浮かべるのは、2008年のアメリカ大統領選挙においてオバマ氏が演説で使った「Yes we can」というフレーズを考えた人というものではないでしょうか(4ページ)。

 

一方で、実際に政策を立案し遂行するのは、政治家でありその指揮の下で役人などの実務家が行います。実務家からすると、たんに聴衆に聞こえのよい言葉を考えるだけのスピーチライターの存在というのは、何もしていないのに調子に乗っている、派手にかっこつけてるだけといった、ネガティブな印象を持つのではないかと思います。この本のサブタイトルの表現には、かなり反発を感じるのではないでしょうか。実際アメリカにおいては、一時、スピーチライターがホワイトハウスから追い出されたことがありました(21~22ページ)。

 

いずれにしても、日本においてはまだそれほどなじみのある職業とはいえないスピーチライターという職業がどういうものなのか、ということを現役のスピーチライターが実例もまじえながら具体的に説明してくれています。この本を読んでよくわかったのは、スピーチライターというのは単にスピーチ原稿を書くだけの仕事ではないということです。演説する人が何を発信したいと思っているのかを理解し、そして、必要な情報を収集、分析し、さらには、スピーチに対してどんな反論がなされるかということも想定して原稿内容を考える、言い換えれば、演説する人になりきって原稿を考える仕事です(186~187ページ)。

これからスピーチライターという仕事をしたいと思っている人にとっては、とても面白い本です。さらに、広報関係の仕事をしている人にも有益な本です。広報担当者のことをスピーチライターとは言いませんが、実際、会社の社長がしゃべる原稿を作成していれば、それはスピーチライターといえますし、さらに、広報の経験を積んで将来独立を考えるのであれば、まさに、広報担当者とスピーチライターは同じです。

 

一方で、スピーチライターが演説する人になりきって原稿を考えると聞くと、演説したのは本人でも内容はスピーチライターが考えたので、それは本人の本当の演説ではないという見方もできます。でも、そうではないんですね。どんなに良い演説内容をスピーチライターが考えても、その内容を演説する本人が納得していなければ、演説に説得力が生まれません(61~62ページ)。「Yes we can」というフレーズの場合、それをオバマ氏以外の政治家が演説で使っても、あそこまで聴衆に大きな影響を与えるとは限らず、オバマ氏があのフレーズを言ったからこそ、影響を与えたのであり、フレーズを考えたのはスピーチライターでもやはりあのフレーズはオバマ氏のフレーズと言えます。

 

また、演説の良し悪しというと、「Yes we can」のような特徴的なフレーズの有無にどうしても注目がいってしまいますが、それは結果にすぎません。演説全体の中で、そのフレーズに至るまでのところで、聴衆の共感をじわじわと得られるように演説内容を工夫し、その結果が、フレーズに対する聴衆の強い反応につながります。これを突き詰めると、あえて、名言みたいな言葉を考えなくても良い演説は可能とも言えます。

 

演説とかスピーチをする人にとって、一番嫌な状態とは、聞いている人が居眠りをしてしまったり、スマホをいじったりして、自分の話しを聞いてくれない状態でしょう。なぜそうなってしまうのか?演説、スピーチというと、ついつい、話し手の考えてること、言いたいことつまり意見を述べるものと考え、意見の内容はしっかり演説内容に盛り込まれますが、それではダメだそうです。いくら自分の意見ばかり聴衆に伝えても聴衆は共感してくれません(66~67ページ)。居眠りされたりスマホをいじられたりという経験、わたしはこれまでイヤというほどしています。これまでは、なぜそうなってしまうのかぜんぜん原因が分かりませんでしたが、共感がポイントだということがよく分かりました。

 

演説というと政治家の話しになりますが、そこまでの大げさなものではなくても、社内で上司や部下、あるいは他部署に対して何か説明をし同意を得る必要があるとき、社外の顧客に自社製品について説明をし契約を取る必要があるときなど、スピーチ、正確には説明・説得なのかもしれませんが、スピーチというのは、一部の特殊な人に発生する業務ではなく、ひろく仕事をする上で発生する業務です。もちろん、ふつうの人はスピーチライターなど付くはずもなく、自分で内容を考えないといけませんが、そういうときに、この本はとても参考になります。