日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

じつは恐ろしい世の中で生きていることに背筋を凍らすとともに、どうすればいいのかを教えてくれる本

政府は必ず嘘をつくーアメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること(著者:堤未果)角川SSC新書、2012年2月第1刷発行、同年4月第5刷発行、

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いま日本では、森友問題での公文書かいざん問題、防衛省の日報問題、あるいは少し前で忘れ去れたようですが厚生労働省裁量労働制に関するデータ問題など、公文書についての問題が噴出しています。このときにこの本に出会うのは、ただの偶然とは思えないタイミングの良さを感じてしまいます。しかし、この本で述べている話のレベルは、森友や日報のレベルをはるかに超える、深刻なものでした。

 

サブタイトルのとおり、この本は、アメリカで起こったことが日本でも起こるという内容ですが、日米の何を比べているかというと、そのひとつは、9.11同時多発テロと3.11東日本大震災です。

9.11同時多発テロにおいて、世界貿易センタービルで救出活動に従事した人たち(ボランティア含む)に、肺がんなどの呼吸器系の健康障害が大規模に起こっています。ところが、当時、アメリカ政府は、作業現場は安全であると言い続けていました(21~22ページ)。この言葉、どこかで聞いたことありませんか?そうです。3.11東日本大震災のとき、当時の日本政府は、「ただちに健康に害はありません」と言い続けていました。そっくりです。果たして、この言葉をそのまま真に受けて本当に良いのでしょうか?ほかにもいろいろありますが、本当に政府の言うことをそのまま信じていて大丈夫なのでしょうか?というのが、この本が読者に対して発信する最大のメッセージです。

 

こう言われると、こんな疑問を持つ方もあると思います。

①多少は事実と異なる情報を政府が発信することはあるかもしれないけど、それは例外に過ぎないのでは。そもそも、なぜ政府がそんなことをする必要があるのか?

②いまのようにインターネットが発達した時代に、情報を隠し通すなんて、政府といえでももうできないのでは?また、マスコミの報道もあるから大丈夫では?

たしかに、どちらの考え方も一理あるなあと思います。それに、正直いって、政府が情報を隠しているなんてことはあってはいけないし、あって欲しくないので、疑問の内容が事実であって欲しいと願う気持もあります。

この本は、こういう考え方に対しては次のような話を紹介しています。

 

①についていえば、こんな話しがあります。

「どうしても腑に落ちないニュースがあったら、カネの流れをチェックしろ」(162ページ)

WHOの運営資金は加盟国政府からの拠出金でまかなわれることになっているが、ここ10年で民間企業からの助成金が急激に拡大し、今では国連予算の倍の資金を私企業から受け取っている(52ページ)

 カネの流れを調べると、東京都が、東日本大震災の被災地から出る瓦礫の受入れを反対を押し切って決定したのはなぜか、ということがわかります(165~167ページ)。また、これは日本だけの話しに限りません。国際機関でも同じことになっていても、ぜんぜん不思議ではありません。お金の流れは雄弁です。

 

②についていえば、福島第一原発に取り付けられた「ふくいちライブカメラ」の話があります。わたしはぜんぜん知らなかったのですが、当時、この映像に修正がなされているのではないか、という指摘があったそうです(132ページ)。さらに、こんな話しもあります。

3・11後、ソーシャルネットワークサービスのひとつであるミクシイに、東電の計画停電についての疑問を書いた日記をアップしようとしたところ、何度やってみても反映されなかったという話をあちこちで聞いた。他にも、ヤフー・ブログでドイツの気象庁が提供する風向き予測をベースにした「日本国内放射能移動予測」を載せたところ、勝手に削除されたという会社員がいる(149~150ページ)

 

マスコミの報道については、いぜんこんな本を読みました。

 

mogumogupakupaku1111.hatenablog.com

 

 

この本では、9.11世界同時多発テロ、3.11東日本大震災だけでなく、東日本大震災復興事業、TPP協定、教育・学校改革、医療改革、米国の対テロ戦争など、さまざまな事例をとりあげて、その政策決定過程において、政府が国民に正しい情報を提示していないか、ということを説明しています。

これら分野も内容も違うし、また、実行主体も違うバラバラの政策において、なぜそのようなことが共通に起こるのか、キーワードは「コーポラティズム」です。初めてこの言葉を聞いたという方には、とくにこの本をおすすめします。