日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

誰もがなが~く付き合う「意識」。「意識」とは何か、いちども考えないのはもったいない。

意識とはなにかー〈私〉を生成する脳(著者:茂木健一郎)、ちくま新書、2003年10月第1刷発行、2005年11月第6刷発行、
ーーーーーーーーーー

「意識って何だろう?」と聞かれても、「何だろう?」としか言いようがない。それでも無理やり答えを考えてみると、「いまこう頭の中で考えていること、思っていることという感じかなあ?」ぐらいの答えしかわたしは思いつかない。そして、考えている、思っている存在とは何か、それは自分自身、つまり私ということになります。ここで思い出すのがこの言葉。

我思う、故に我在り

フランスの哲学者デカルトの言葉です。あるものが存在するとは何か、それは自分がそう意識しているから、そうすると、その存在は絶対的ではない。といろいろ考えていくと、確実に存在していると言えるのは自分がいまこう考えているという自分の存在だけである、という意味です。さいしょの質問、意識とは何か?という質問に対する答えは、「意識とは私自身である」ということになります。この答えは、わたしの説であって著者の茂木氏の説かどうかはわかりませんが、この本は、「意識」という誰もが行う行為でありその意味で誰もが知っていることについて、じつは誰もがどのような意味で分かっていないのか、そして、茂木氏の専門である脳科学はそれにどう迫るのかを丁寧に述べています。

じつは、問題が存在することに気付くこと自体がむずかしい

茂木氏は「ただいま」という言葉を例に、どういう問題があるのかを説明しています。家に帰ってくると「ただいいま」と言います。いま家に帰りました、というメッセージですね。子供も大人も誰もがふつうに言います。なにが問題なのか?
なぜ、家に帰ると「ただいま」と言うのか?「ただいま」という言葉はそういう時に使うと決められているから、というのが1つの答えですが、それでは答えになりません。そういう国語的な話ではありません。なぜ「ただいま」という言葉を使うと決まっているのか?他の言葉ではなぜだめなのか?言い換えれば、「ただいま」という音を聞いた人は、なぜ家に帰ってきたというメッセージと意識するのか?という問題です。こういうことを問題と思える人は、単なる社会的な常識・ルールとして終わらせず、その奥底を追求するというちょっとした求道者に見えてきます。茂木氏は、自身の5歳の時の体験がこの問題意識の発端となっているそうです。すごい!でも、質問された茂木氏の親はそうとう困ったことでしょう(笑)

そもそも、自分自身がどういう意識なのか分かっていない

意識とは私の存在であると考えると、とうぜん意識とは何か、すくなくとも本人は分かっているはず。でも、そうとは限らないと茂木氏は言います。茂木氏が指摘するのは、誰かと会話をしているときに、相手から言われたことに対して何を言うのか、ということを本人は具体的に意識していないことがあるということ。たしかに。思ってもいないことを口にしてしまったり、何も考えずに反射的に言葉が口から出てしまったり、という経験、誰もが多かれ少なかれあるのではないでしょうか。もちろん、人によってそのコントロールが上手な人と下手な人の差はありますので、程度は人それぞれですが。じっと何をいうか考えそれからことばを発する、ということが常にできるわけではありません。
このことは言い換えると、私は私自身を分かっていないということにもなります。自分はいま本当は何を望んでいるのか、何をしたいのか、わからずに迷ってしまうことよーくあります。

意識を解明できるかは科学の限界へのチャレンジ

この本は2003年発行なので、あくまでもその時点ということになりますが、茂木氏によると意識を科学はほとんど解明できていないそうです。そして、かなりの難題のようです。
科学は、方程式・アルゴリズム・機能により物事を一律に説明することを目指しますが、意識についてそれが可能なのか?意識は私そのもの、では、人とは何かということを科学が説明できるのでしょうか?できるできないは、科学の進歩次第なのでわたしは分かりませんが、説明されることを望むのか望まないのか、複雑な話です。
「人が・・・という感情をもつのは脳の中の・・・という部分の機能による」ということが脳科学により解明されたというニュースを聞くと、なんとなくうれしい気持になります。なぜ自分が一定の感情を持つのか自分でも分からないのですから、それを脳科学が説明してくれるのはうれしい。自分のことが少し分かったような気がするから。でも一方で、意識は私ということを強く捉えれば、私は私、人は人、そんなまとめて説明されてたまるか!という反発する気持が生まれてもおかしくない。意識対脳科学、どちらに勝つのか、どちらに勝って欲しいか、悩ましいです。

裏表紙の茂木先生の写真、若い!(笑)