広岡氏が大谷選手の二刀流に厳しいのには訳がある。広岡氏、さすがただ者ではないと思わせる本です
日本野球よ、それは間違っている!(著者:広岡達郎)、幻冬舎、平成30年3月発行電子書籍
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著者の広岡氏は、1954年に巨人に入団し名ショートとして活躍。引退後は、監督としてヤクルトと西武で日本シリーズに優勝。つまり、野球の選手・指導者としてとても実績のある者です。この本は広岡氏が現在の日本野球の問題点を指摘している本ですが、けっこう過激な内容もあります。たとえば、
それでも大谷のポスティング移籍には反対だ!
大谷の二刀流は才能の無駄遣い
清宮はプロの前に大学に行くべきだった
筋トレの肉体改造は野球選手にとって有害
メジャーの猿まね制度改悪は間違っている
ビデオより審判を信じたい
といった感じです。
野球に興味のない方には、「何のこと?」という感じでしょうけど、野球ファンであれば、どれも知っている話ばかりだし、ふつうにマスコミなどで言われることは、だいたい、広岡氏の言うことの逆。
例えば、大谷選手の話しであれば、「ポスティング移籍、いいんじゃないの。若いうちからメジャーで頑張れ」「二刀流いいねえ。ふつうできないことをやってる大谷選手はすごい!」という感じでしょう。じっさい、大谷選手、メジャーでも活躍しているようです。しかし、それでも広岡氏はその主張をまげません。
ちゃんと考えるということはこういうこと
これだけだと広岡氏、ただの頭の固い頑固オヤジ(1932年生まれ)。日曜の朝に「喝!」と言ってときどきバッシングされている某元野球選手と変わらないように見えます。
しかし、この本を読むと、決して、ただの精神論とか気合みたいなことで広岡氏が主張しているのではなく、ちゃんと理由があることがよーく分かります。ちゃんと考える、というのはこういうことを言うのかと勉強になります。言い換えると、マスコミとかが知らずに報道していない(あるいは、知っていてもあえて報道していない)事情がいろいろあり、必ずしもマスコミが報道するような単純な話しではないということがよく分かります。
広岡氏の選手指導論は、実社会でも役に立つ
広岡氏は現役引退後、コーチ、監督して多くの選手を指導しています。この本では、そんな指導者としての経験から、あるべき指導論を述べています。もちろん、広岡氏は野球選手に対する指導の話ししかしていません。しかし、だから実社会では関係ない、というのは違います。
野球選手は、いわば野球のエリートばかり、プライドもあり、また実力もある人ばかり。つまり、人の言うことを素直に聞くタイプではありません。そんな選手を指導するのは、会社で部下や後輩を指導するのに比べれば、はるかに大変。だから、実社会でも役に立つんです。
野球に興味のある人だけでなく、興味のない人にも、勉強になるところがある本です。