日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

医者なくしては健康に生きることはできません。そんな大事な医者と上手に付き合い幸せな人生を送りたい人におすすめする本

患者は知らない 医者の真実(著者:野田一成)、ディスカヴァー携書、2016年4月第1刷、

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著者の野田氏は現役の医者です。医者の立場から患者に知って欲しいと思う「医者の真実」を書いたのがこの本です。こう聞いても特別の反応はふつうないと思います。

しかし野田氏はふつうの医者とはちょっと違うかわった経歴の持ち主です。もともとはNHKの記者として医療問題の取材などをしており、どちらかと言えば、医者に対して批判的な立場にあった人です。そんな野田氏ですが、取材を通じて自らが理想とする医療をやりたいと思うようになり、NHKを辞めて医学部に入学し医者になっています。

医者の立場は当然分かり、それだけでなく、医者以外の人から医者はどんな風に見えるのかということも分かるという、野田氏のふつうの医者にはない目線が、この本の特徴です。

 

〇こんご医者にクレームを言うのはやめようと本気で思う

 

大病院に受診しにいくと、「予約をしても予約した時間よりもかなり遅れてから診察が始まる」、「やっと診察してくれたとおもったら5分でおしまい」という経験をすることがあると、よく言われます。患者としては勘弁して欲しい、医者に文句の一つでも言いたくなります。

 

でも、この本を読むと、なぜそんなことが起こってしまうのか、そして、それは医者や看護師が悪いのではなくどうしてもそうなってしまうものである、ということがよく分かります。

 

また、病院で働く医師、看護師、事務職員といったスタッフの言動に腹が立った経験のある人は、一定程度いると思います。あるいは、医者に純粋に善意で「つけ届け」を渡そうとしたら頑なに拒絶されて気分を害したという経験のある人もいると思います。

 

野田氏は、なぜそういうことが起こるのかとてもわかりやすく事情を説明してくれています。この本を読んで事情を聞いてしまうと、病院でクレームを言うのは明日からやめようと本気で思います。それに、そういうことをしないことで病院のスタッフがより気持ちよく働けるのであれば、それは患者にも利益になることだと私は思います。

 

〇後医は名医

 

聞きなれない言葉ですが、同じ患者、同じ病気を最初に診察した医者よりもその後に診察した医者の方が、その患者から高く評価されるという意味だそうです。これは、患者が「セカンドオピニオン」を求めた場合に当てはまる言葉です。

この「セカンドオピニオン」という言葉、「最初に診察してもらった医者の診断結果に不満、疑問があるので、他の医者に診察してもらう」という意味だと多くの人は理解しているのではないでしょうか。私もそう思っていましたが、野田氏によるとそいうものではないそうで、この「セカンドオピニオン」という言葉の誤解が、「後医は名医」という状態をもたらすようです。

 

複数の医者が同じ患者の同じ病気を診察した場合に、もちろん最初に医者が誤診したというのであれば論外ですが、この話しはもちろんそういう話しではなく、治療としてはどちらの医者も間違っていない、場合によっては、同じ治療しかしていないのに、患者は後に診察してもらった医者を高く評価してしまうこともあるようです。

なんともマヌケな話しです。なぜそんなマヌケな話しになってしまうのか、野田氏はそのメカニズムをとても分かりやすく説明してくれています。

 

〇では、どうすれば適切な医療を患者は受けられるのか?

 

 

「後医は名医」という言葉は医者の世界で言われる言葉だそうで、わたしには、「セカンドオピニオン」という風潮に対する医師の不満が表れている言葉と聞こえました。

一方で患者からすると、「では患者は医者の言うことをなんでもはいはい聞けと言うのか?」という疑問が生じます。医者の説明や回答を聞いた結果、患者が疑問を持った場合はやはり「セカンドオピニオン」だろうという気もします。

 

しかし、何を根拠に疑問を持ったのかが重要だとわたしは思います。ひょっとしたら、自分がネットで調べて得た情報と違うということではないでしょうか?そうだとすると、これは、誰も正しさを保証していないネットの情報を、実際に診察した上で医者として説明してくれている内容よりも重視するということになるわけで、どう考えてもおかしな話です。

 

こういう患者の行動の背景には、医者と患者を対立関係でとらえる受け止めがあるとわたしは思います。医療事故の問題が大きく報道され、また、医療情報がネット、雑誌などで溢れる中、対立関係をより激しくさせる状況だけはそろっているのが現状ですが、双方の気持を理解する野田氏の本は、この対立関係を緩和、解消させてくれる本だと思います。

対立関係において患者が適切な医療を受けられることはまずないでしょう。医者と上手に付き合い、そして適切な治療を受ける、そのためにはぜひとも一度は読んでみるべき本だと思います。