日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

読書好きな人に読んでいただき、自分の本当の気持を確かめて欲しい本。読書好きでない人にも役立つ本です

勉強法 教養講座「情報分析とは何か」(著者:佐藤優)、角川新書、2018年4月初版発行、

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この本は、冒頭、この言葉から始まります。

 

暗さは暗いと認識して初めて、明るくするための現実的方策を考えられるのだ

 

なにごとも、自分がいま置かれている状況を正確に把握することから始まります。これができなければ、どんな問題も解決することはできません。そして、状況を正確に把握するツールが情報分析です。この本は、情報分析とは何か、そして、そのために必要な勉強法について教えてくれます。佐藤氏は元外務省の役人で、情報分析の専門家ですので、情報分析とは外交、インテリジェンスのそれを指します。この本は、勉強法、情報分析についての本であると同時に、インテリジェンスの世界を垣間見せてくれます。

 

〇インテリジェンスの常識から歴史教育を考える

 

インテリジェンスの世界のものの考え方、見方をこの本で佐藤氏は紹介してくれますが、その内容には、一般人から想像もつかないものがあります。インテリジェンスというと非合法活動のイメージがありますので、想像がつかないのは当たり前といえば当たり前ですが、わたしが感じた想像もつかなさはそれとはちょっと違います。

 

インテリジェンスは常に物語として出てくるということを、認識しなければいけない(中略)ですからインテリジェンスを勉強するとき、いちばん重要なのは、実は文学なのです。

 

驚いたのではないでしょうか?ここでいう「文学」とは文字通りの意味、つまり、一般的な「文学」という言葉つかいと同じつかい方をしています。またここで佐藤氏は、「物語」という言葉を使っています。そしてちょっと意外なのが、歴史も物語であると分類しています。

 

歴史と聞くと、過去の事実の塊であるというのが一般的なイメージではないでしょうか。学校で勉強した日本史や世界史のテキストには、いつどういう出来事があったという事実がならべられています。歴史の歪曲をしない、歴史を直視するみたいなことが話題になります。とくに中国や韓国との間の歴史問題のときに言われます。しかし、この本を読むと、そもそも歴史というのはそういうものではないということがわかります。

 

イギリスやロシアは、国家あるいは社会が歴史の継承を、システムとして埋め込んでいます。教科書の中にそれがよく表れている。日本の歴史教科書は事実載られるだけで、立場がありません。どの国の歴史なのかよくわからない。世界史というのは決して一つではなく、史料選択のところで既に歴史観が入っています。ところが我々は、中立的な世界史があると勘違いしています。

 

「なぜ歴史を勉強しないといけないのか?」という質問に対しては、歴史を学ぶことで過ちをしないで済むというのが答えの一つでしょう。いわゆる歴史問題はこの文脈で語られます。しかし、歴史とはそもそもそういうものではないようです。

そうすると、「なぜ勉強しないといけないのか?」という疑問はなお残ります。わたしも答えはありません。ただ、すくなくとも各国は歴史をとても重視し、その国にとっての「歴史」をしっかり教えています。わたしはなぜ各国のようにすべきかということについて答えは持っていませんが、すくなくとも言えるのは、各国がこのようにして歴史を教えそれにより自国の立場・考え方を承継させている以上、日本も対抗して同じように日本にとっての「歴史」を日本人に承継しなければならないし、理由としてはそれだけでも十分だと感じます。別に愛国教育とかそういう話ではなく、いまがあるのはなぜかという過去との連続性を勉強し、それにより、自分自身、いまの社会を正しく理解するということです。

 

各国に比べると、日本ではなぜ歴史を学ばないといけないのか、ということの理由が明確になっていないようです。それゆえ歴史の勉強とはただの知識の習得にすぎないとされ、だから、知識は多ければ多いほど良いとばかりに何でも詰め込むのでしょう。どう考えても、まだ日本が外国とまったく交渉のなかった近代以前の外国の歴史を学ぶ必要があるのか、さっぱり分かりません。たとえば、古代ローマ帝国の歴史とか、アメリカの独立戦争についてなぜ知らなければいけないのでしょうか?また、日本史でも、縄文時代弥生時代の土器の話しとかをなぜ知らないといけないのか、まったく意味がわかりません。

 

〇勉強法の話しだけど、勉強以外でも役立つ

 

この本は勉強法の話しですから、この本で紹介する勉強法により実際に勉強することが読者には推奨されています。でも、そうはいっても、実行することはなかなか難しいです。

たとえば、世界情勢を正確に理解するには歴史を知っている必要があると佐藤氏は言っています。なので、シリア情勢を正確に理解するには、その歴史を知らないといけないということになりますが、一般人がそれを勉強するのはとても無理です。

では、この本の勉強法は役に立たないかというとそうではありません。自分は勉強していなくても、たとえば、シリア情勢を解説している人が複数いるとき、誰の話を信じればいいのか、というときの判断材料になります。

 

また、別に自分はシリア情勢に興味がないという人もいるでしょう。それでも、勉強法は役に立ちます。歴史が大事ということは、経緯が大事とも言い換えることができます。なにか目の前に問題がありそれを解決しないといけないとき、目の前だけを見ていてもだめで、そうなってしまったこれまでの経緯も見てみるという感じで、勉強法をふだんの生活に応用することができます。

  

〇こんな人になりたい。それが無理でも、こんな生活を送りたい

 

ふだんの生活では、仕事とかにいそがしく、佐藤氏がこの本で紹介する勉強法を実行することはなかなか難しいです。でも、ひとつ確実に言えるのは、佐藤氏が紹介する勉強法をちゃんとやれば、世の中の動きを正確に理解できるということです。ひょっとしたら、テレビに出て解説している人よりも正確に理解できているかもしれません。

別に世界情勢だけではありません。日本国内のことも同じです。佐藤氏はこの本で、山本太郎参議院議員園遊会天皇陛下に手紙を渡した行為(2013年10月31日)について論評していますが、当時一般的に言われていたことと全く異なる論評であり斬新です。それでいてとても説得力があります。佐藤氏の説く勉強法の威力が炸裂しています。こんなことが言えるような人なれたらいいなとあこがれます。

 

ただ、佐藤氏レベルに達するのは容易ではありません。これが現実。

わたしは、それとは別の魅力を感じます。それは、ここで紹介している勉強法をしっかり実行する、つまり、勉強に時間をいっぱいかけられるという、そういう生活を送ること自体に強いあこがれを感じます。渡部昇一氏の本に「知的生活の方法」という本があります。

 

mogumogupakupaku1111.hatenablog.com

 

この本を読んでわたしは、読書に明け暮れる生活にあこがれるようになりました。日常にまぎれて忘れかけていましたが、佐藤氏の本を読んで、そのことを久しぶりに思い出し、また、あこがれに火がついたようです。

読書が好きな人は、ぜひ佐藤氏の本を読んでみて、自分の読書好きがどの程度の強さなのか確かめてみてはいかがでしょうか。そして、それが相当強いものであることが確かめられたならば、その夢の実現に向けて歩む出すことができます。

佐藤氏の本があなたの背中を押してくれます。