日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

思うようにいかなくてがっかりしたり、落ち込んでいる方に読んで頂きたいおすすめの本

「「だましだまし生きる」のも悪くない」香山リカ光文社新書、2011年2月初版第1刷発行、

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精神科医でもあり大学教授でもある香山氏。また、テレビ番組でも見かけることがあり、通常の医師よりも大いに活躍されているというイメージです。

これまでの私の半生を、あえて言葉で表すとしたら、どうなるんでしょうか・・・・・・。考えてみれば「金太郎飴」みたいな人生ですかね。年齢を重ねてきてはいるけれど、どこを切っても、どこを取っても同じように個性のない金太郎飴(3ページ)

意外な評価ですね。ただ、肩の力が抜けているいい意味での脱力感を感じます。

父も素直じゃない人。だから、「物事すべてに裏がある」っていう、極めてマスコミ的なものの見方をすぐするわけですよ。「政治家なんか、みんな腹では何を考えているかわからない」みたいな。それは私に影響を与えましたね。ええ、いい意味で。物事の裏を読み解く癖とか、10人中9人が「うん」と言っても、私は最後まで疑ってかかるぞ、という意識ですね(中略)田中角栄氏は、たとえば国防について、こんなふうに話していたのを記憶しています。「北海道の皆さん!北海道はね、いくら今年は雪が少ないっていわれたって、みんなストーブ用意するでしょ。それと同じで、いくら日本が平和だ平和だっていったって、国には軍隊がなきゃダメなんだよ」こども心にも「こんなくらだないレトリックに騙されるのはおかしい。この人はやっぱりつまんない。大したことない!」とか思った(27~28ページ)

マスコミ的なものの見方とは、あまり熱をあげない、思いこまないという考えと通じるところがあり、それは、「だましだまし生きる」ことにも共通していると思います。

それはそれで、私の主張には反しているんですが、実は、“何も考えずに、言われるがままにやる”という状況は、私自身にはものすごく合っているんです(中略)いろいろ考えすぎてしまうより、「もう考えてもしようがないや」とか、「考えないで言われるがままにやっていたら、後々、そんない悪いようにはされないよな」っていうように思っていましたので、すご気楽だったんです(66ページ)

精神的にとても楽になれて良いですね。ただ、言われるがままにやった結果が本当にそれほど悪くないかどうかはとても重要で、この話は1980年代の話です。いまも同じやり方で本当に大丈夫かどうかは分かりません。

仕事に夢を求める人もいるでしょう。その夢と、「パンを食べるための仕事」という現実のあいだで悩む人もいるかもしれません(中略)大きな夢のために、つまんない(=パンのために働く)ことを手放したとき、自分の毎日の生活さえマネージできていないことに気づく。すると、それだけでものすごく自信喪失してしまって、大きな夢どころじゃなくなったりもするんです。そういう意味では、実は「生活のために働いている」というのは、ものすごく大事なことだし、そのことを「くだらない」とか「つまらない」って自己卑下する必要はまったくないのではないでしょうか(68~69ページ)

とても良い指摘だと思います。これはどの時代にも通じることだと思います。仕事にすべてを求めない、という考えが「だましだまし生きる」ことであるとも言えますし、そもそも、人生がそれほど充実していなくてもよい、という考えがそれでもあるとも言えます。香山氏の意図とは違うと思いますが、現在のように不安定な時代を生きる私たちにとっては、簡単にいまの仕事をやめてはいけないという意味で、とても現実的で重要な指摘でもあります。

人間の気持ちとは、体調で成り立っていると言っても言い過ぎではないんです。そんな言い方をすると人間は野生動物のようですが、実際、人間は体調によって気持ちがものすごく変調することがある。だからそういう場合は、「その瞬間」の感情で行動しないで、もう少し、感情の揺れ幅の平均を取って判断したりしてもいいのではないかと思いますね(74ページ)

いまの自分の気持ちが本当の気持ちではないかもしれない、ということでしょうか。そうだとしても、明日の気持ちが本当ということも同じ意味で言えないですので、結局、何が本当の気持ちなのか自分でも分からないということでしょう。そうであれば、いまの状況に不満があってもそのまま受け入れた方が良い、逆に、いまの状況が最高と思ってもそれが変わることも受け入れた方が良いということにもなりそうで、「だましだまし生きる」に通じています。

歌舞伎役者の方が、「自分たちの仕事は親の死に目にもあえない」と言いますよね。でも、それはヒロイズムに酔っているだけであって、本来は、それほど重要な場面なら休むことができるシステムでないと、おかしいわけです(84ページ)

仕事の上で「替えがきかない」とか「穴をあけちゃいけない」と、あまり思い過ぎないほうがいいと思うんです。それは独りよがりだと思ってもらったほうがいいかもしれません(85ページ)

「このチャンスを逃したら、もうおしまいです」と、このような立場の患者さんは口をそろえるんですが、逆に、健康になってから巻き返しを図るほうがいいのではないかと、思うんですよ(86ページ)

 先ほどの話と通じていて、自分がいま思っていることが絶対と思わない、ということですね。前半は会社員の場合、後半は個人事業主の場合です。

たとえば、「自分がフラレるなんて許せない」みたいな、自分にある種のプライドが強くあり過ぎたりする場合が多い。「その人にフラレた」ことではなく、「フラレた」っていうこと自体が許せないタイプです。それから、「ただ執着している」のか「本当に好き」なのか、よくわからなくなっている場合もあります。そこで、「その人じゃないとダメだという理由が、本当にありますか。どうして、その人がそんなによかったんですか?」と少しずつ聞いていくと、「理由は・・・・・・あんまりないですね」という話なったりする(122ページ)

あんまり恋愛や失恋で衝動的なことをするのは、得策ではない気がするんです。いや、損だからしないっていうのもヘンですけど(124ページ)

仕事だけでなく、恋愛などプライベートでも同じですね。124ページの部分は、「だましだまし生きる」ということが端的に表れています。

「子どもがいない」とか「不幸にして亡くしてしまった」ということを踏まえて、「自分の人生の中でどのように受け止めてきたか、いい生き方をしたか」というお手本だってたくさんあるはずです。必ずしも「前向きに受け止めろ」と言うわけではないんですが、「自分にとって100%不幸な経験」っていうことではないかもしれないですよね。自分のやりたい仕事を、それがきっかけで見つけたという方もいるんです。これに対する答えは、その場で出るものではないと思います(129~130ページ)

人生にはある程度、「仕方ない」っていう部分もあるんですよね(128ページ)

子どもの話も同じということですね。特に、「不幸にして亡くしてしまった」方は、この話を聞いて、立ち直ることができるような気がします。128ページの部分には、恋愛も子どもの話およそ人生で起こるすべての出来事に対するスタンスが示されています。

いま、私が勤めている病院は、平日の17時半までしか受付していないんです。私も当初は「これじゃ、勤めている人は来られないじゃん」とか思ったんですが、最近は、「病院に来なければいけない人が19時、20時まで働いているほうがおかしいじゃん!?」と思うようになりました(85ページ)

とてもおもしろい意見です。「だましだまし生きる」ことは、物事を多面的に見ることにつながっているようです。