勝間氏の代表作。人間関係が気になり言うべきことが言えないことを悩む人すべてに読んでいただきたい本
断る力(著者:勝間和代)、文春新書、2009年2月第1刷発行、
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多数の本を執筆している勝間氏ですが、勝間氏の代表作だと思います。右手を挙げて断っているポーズをとっている勝間氏の写真が載っていますが、とても印象的です。
〇「断る力」を身に付けるのは簡単でないが誰でもできる
私の周りで、「自分はイヤなことは遠慮なくイヤと言える」と宣言する人がいます。そういう考え方自体はぜんぜん変ではないし、むしろ、どんどん広められるべき考え方でしょう。
でも、わたしはそういう人を見るといつも思ってしまうのです。「本当にそれを実行できているのだろうか?」と。別に非難している訳ではありません。でも、断るというのは意外と難しいものです。だから、「断る力」を身に着けることも、そう簡単ではないと思います。
でも、この本を読んで、「断る力」を身に付けることは簡単ではないが、誰でもできることであると思いました。
この本では、勝間氏がマッキンゼーで働いたときのことが紹介されています。その頃の勝間氏は、上司やクライアントの要求に対してまったく断る力を持たない、極めて忠実な働きぶりで、そのために私生活を犠牲にし、あるいは、健康を害したりまでしています。自殺願望もあったと言っています。ある意味、「社畜」と言えるぐらい働きぶりでしょう。勝間氏にそんな時代があったとはとても想像できません。でも、勝間氏は、さまざまなきっかけからそんな態度を改め、「断る力」を身に付けました。
だから私は思うのです。「社畜」だった勝間氏でも「断る力」を身に付けられるのなら、誰でもできると。
〇断り方にも方法がある
断るという行為をなぜためらってしまうのか?それは、断られた人が気分を害し、その人とのこんごの関係にひびが入るのを避けたいからでしょう。その裏返しで、断ることを躊躇なくできる人というのは、断れた人がどう感じるか、その人との関係がどうなるかを全く気にしない人であるというイメージがあります。
この本の表紙の写真のインパクトもあり、勝間氏もそういうことを気にしない人なのかなあとわたしは思っていたのですが、この本を読んでみるとそうでもありません。断り方にもちゃんと方法があるのです。
方法については勝間氏がこの本の中で具体的に説明してくれています。説明の仕方、表現は、なんていうのでしょうか、ある意味、とてもドライな感じで、理屈っぽいのですが、実際に入っていることは、わたしはとてもウエットで、断られる人の感情や情緒にとても配慮しているものだと思います。
断ることに心理的な障害を強く感じる人ほど、ぜひ勝間氏の提案する断り方を読む必要があります。じつは断ることは、相手との関係を思っているほど悪くするものではないのだということが分かります。
〇断らないと生きていけない
1989年に石原慎太郎氏と盛田昭夫氏が共同で「NOと言える日本」という本を書きました。これは、アメリカ政府の外圧を断れない日本政府のことを批判した本で、人ではなく国家の話しですが、当時の日本人には断ることを苦手とするメンタリティがあったのは間違いありません。
それから約30年がたちましたが、いまの日本人は断ることへの苦手意識を克服できたでしょうか?
世の中全体の価値判断としては、昔と違い、断ることをマイナス評価するようなものはなくなり、むしろ、はっきり自己主張する人が高く評価されるようになってきているのは間違いありません。でも一方で、ブラック企業、ブラックバイトで、本当はそんな職場からは逃げ出す(断る)必要があるのに、それができず、健康を崩し、最悪は命を失うような悲劇的なことが起こっています。総論としては断ることが良しとされているものの、実際の個人の自分の行動というレベルになると、それがまだ現実化していないということでしょう。
ここまでひどいケースは極端としても、昔と違い、会社は社員を守ってくれません。定年まで職を保証してくれることはありません。自分の身は自分で守るしかありません。
たしかに、断ることは勇気が要ります。「断れないのはしょうがない」という意見もありますが、これからは、「断らないと生きていけない」のです。この本は2009年に書かれていますが、2018年のいまにおいても十分、読む価値のある本です。