日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

その人が何のためにしているのかを、イメージにとらわれず突き詰めて考えるとその人の本音がよく分かることを教えてくれる本

人口減が地方を強くする(著者:藤波匠)、日経プレミアシリーズ、2016年4月一刷、同年7月五刷、

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意外なタイトルです。ふつうは人口減だから地方が困ると考えますから。なぜそんなユニークな発想を著者の藤波氏はするのだろう?そんな疑問を持ちながら読み始めました。

 

政府では、2020年までに東京圏への転入超過をゼロにするという方針を立てていますが、その受け皿はどこなのでしょうか?(中略)例えば、現在10万人に及ぶ東京圏への転入超過が、政府の目標どおり2020年にゼロになり、以後その状況が継続する場合を考えてみましょう。地方では、若い世代の人口が、流出があった場合に比べ12.5%増加することになります(中略)地方において、2020年までという短期間に、しっかりとした所得が得られる新規雇用を、受け皿といて十分な規模で創出することは、至難の業と言わざるをえません(中略)一方、東京圏では、若い世代の人口が、流入があった場合に比べ25%減少します。この影響は極めて大きく、おそらく若者向けサービスの多くが壊滅的な影響を受けるでしょう。また、さまざまな産業や企業が深刻な人手不足に陥り、経済自体が回らなくなる可能性があります(37~38ページ)

 

たしかに、言われてみればそうだなあと思います。むしろ、なぜこんな簡単なことに気づかなかったのだろう?とすら思ってしまいます。藤波氏の分析はとても冷静です。

 

日本中どこであろうと、若い世代が持続駅に暮らしを営むためには、一定の収入が期待できる仕事が必要であるという当たり前のことを軽視してはいけません(49ページ)

 

ほんとうに当たり前のことです。逆に言うと、こういう当たり前のことに目配りされていない政策はあやしいと思う必要がありそうです。

 

違和感があるのは、こうしたマクロ的な成長戦略と、地方創生戦略の方向性が一致していないことです。政府の方針は、日本が国際競争に競り勝ち、日本全体の成長を牽引するためには、東京をはじめとする大都市で人材が不足しているという認識に立脚しており、その人材を主に高度な外国人で補おうとしています。その一方で、地方創生戦略では、東京圏と地方の人口移動を均衡させる政策を大きな柱に据え、総力を挙げて自然な人口の流れを攪乱してまで、日本人の若い世代を地方に押しとどめようとしています(77ページ)

 

役所の縦割り行政の弊害の典型でしょう。しかし、こう較べられると、藤波氏の違和感、すごいよくわかります。いったい、どこを向いて政策を考えているのでしょうか?

 

「地方消滅」という言葉はとても罪作りです。センセーショナルな言葉にあおられた自治体が、手っ取り早く消滅を防ぐために移住者の取り込みに傾注するのは至極当然です(中略)冷静に考えてみれば、人口が減少することで消滅するのは自治体という枠であり、地域ではありません。そうした指摘はすでに各所から出てきています。人口規模の縮小が自治体の財政運営を非効率なものにするため、単独での存続が難しくなり、市町村合併へと向かうことになります。しかし、自治体が合併すること自体は、必ずしも個々の住民にとっての不利益には直結しません(中略)では、地方消滅を食い止めようという取り組みは、いったいだれのために存在するのでしょうか。自治体という既存の枠を維持するために一定の人口を必要とするという発想は、人口減少の日本では砂上の楼閣を追い求めているように映ります(204~205ページ) 

 

なるほど。無茶にしか見えない人口移住政策がなぜこうも競って行われているのか、よくわかります。

 

各地域が取り組んでいる地方創生戦略にしても、上の世代の無責任な振る舞いを感じる場面が決して少なくありません。当面は補助金などに依存し、その後は低所得での暮らしに陥る世帯が多いことがわかっていながら、心の豊かさや生活費の安さを売りに、若い世代に地方への移住を安易に促すことが横行するようであれば、それは現世代の将来世代に対する裏切り行為です(210ページ) 

 

これが事実とすれば思わず目をそむけたくなる現実ですが、いかにもありそうです。これも人口移住政策がその場しのぎになることの大きな原因です。また、同時に、実際に地域に住む人のことをぜんぜん考えていないこともわかります。

しかし、ある程度人口がないと地域が維持できないのも事実。ひとりだけでは生活できません。そうすると、やり方はともかく人口移住政策自体は必要ではないか?とも思えます。

 

2006年の調査で「10年以内に消滅する」とされた集落は423(調査エリアの全集落の0.7%)あり、このうち4年後の再調査で本当に消滅していたのは35集落でした。これは、「10年以内に消滅する」とされた集落の8.3%に過ぎません(中略)実際には少数ながらUターンがあったり、Iターン者の流入があったりと、予想に反して消滅しない集落が多いということです。単純に調査時点の人口の動態と高齢化のみをもって消滅間近とみなすのは、実際の集落の持続性を見落としてしまう可能性があります。一連のデータが示すのは、都市住民が考える以上に中山間地域の人の暮らしというのは持続性が高く、集落は案外「しぶとい」ということです(中略)興味深いことに、同期間に新規に誕生した集落は、消滅集落の10倍に相当する928もあります。私たちは、限界集落や消滅可能性都市にばかり目を奪われがちですが、実はその裏で急速に人の暮らしの場は広がっているのです(179~180ページ)

 

とても励まされ、また心強い話であると同時に、いまの人口移住政策に対する不信感を増幅させる話でもあります。さまざまな政策が誰のだめに行われているのか、少なくとも地域のためではないことは否定できないようです。

 

この本、3か月という短い期間で、五刷を数えています。とても売れた本だと思います。失礼ながら、このテーマではあまり売れないだろうとわたしは思っていましたので、さいしょは意外に思いましたが、内容を読んでみると納得です。みんながなんとなくおかしいと感じている、でも具体的にどうおかしいのか分からないことを端的に説明してくれているからですね。