日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

「組織の掟」佐藤優

佐藤氏は現在は作家として活躍されていますが、大学卒業後は外務省に入省し、ロシアに関する情報収集・分析の専門家として、外務省本省、在ロシア日本国大使館などで勤務しています。この本は、外務省という組織に属していたころの経験がベースとなっています。

したがって、紹介される事例などは外務省のものが中心なのですが、だからといって、この本の内容が、外務省、公務員といったある意味特殊な組織にしか通用しない話かというとそうではなく、佐藤氏は、一般企業という組織でも通用するように丁寧に説明を加えています。

また、タイトルからすると、組織というものをマイナスとして評価している印象です。もちろん、組織と個人という関係において、組織が個人にマイナスの存在となることがあり、それを防ぐためにはどうしたらよいか、という観点から、組織に関する従属術、分析術を述べていますが、組織が個人にプラスの存在となる場合もあるとして、組織の活用術も紹介しています。

一方、組織が個人にとってマイナスの存在となるとき、その個人は若手だけでなく管理職クラスといった中堅クラスということもあり得ます。佐藤氏は、そのようなクラスの個人にとってもどのように組織で生き抜くべきなのか、組織の管理術、防御術、処世術、戦闘術、外交術という分類で紹介しています。

佐藤氏の人間評価で意見が分かれるのは、やる気はるけど能力はない人、やる気はなく能力もない人、どちらを評価するかという点でしょう。佐藤氏は後者を前者よりも評価しています(後者の方が前者よりもマイナスが少ないというニュアンスかもしれませんが)。しかし、通常の評価は逆ではないでしょうか?私もそう思っていました。佐藤氏がそのように評価する理由は、自分の能力の限界を分からず行動する人が一番面倒である、というのが私なりの解釈です。

当然ながら、私自身は佐藤氏とまったく面識はありませんが、この本からうかがえる佐藤氏は、鋭い観察と、性悪説に基づく予想(最悪の事態の想定)というのが行動の基本かなと思われます。これを間違いという人は普通いませんが、現実に自分や周りができているか、というと不安いっぱいです。

何らかの不利な状況の発生を予想する発言に対して「それはあり得ないだろう」と根拠もなく否定する発言、ついつい自分はしていないだろうか?不安いっぱいです。

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「組織の掟」新潮新書662

著者 佐藤優

2016年4月 発行、同年5月 4刷

発行所 株式会社新潮社