日々読書、時々一杯、折々投資

モグパクです。都内で働くサラリーマンです。 新書・文庫を1日1冊読むのを日課にしてます。あと、酒(主に日本酒)を飲むこと、投資をすることが好きです。

人生つまらないなあと思っている人の目をシャキッと覚まさせる本

野心のすすめ(著者:林真理子)、講談社現代新書、2013年4月第一刷発行、2013年5月第二刷発行、

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なかなか刺激的なタイトルです。林氏がこの本の中で書いていますが、「野心」ということばマイナスのイメージの言葉ですが、それをすすめるというのはどういうことでしょうか?

 

私が最近の若い人を見ていてとても心配なのは、自分の将来を具体的に思い描く想像力が致命的にかけているのではないかということです。時間の流れを見通すことができないので、永遠に自分が二十代のままだと思っている。フリーターのまま、たとえば居酒屋の店員をずっとやって、結婚もできず、四十代、五十代になったときのことを全く創造していないのではないか、と。より具体的に言えば、「このまま一生ユニクロを着て、松屋で食べてればオッケーじゃん」という考え方です(36~37ページ)

 

思わずオッケーでしょと言い返してしまいそうです。でも続きを読むとそうも言っていられません。

 

肌もたるみ、髪も痩せ、全身がいよいよ重心に逆らえなくなってくる四十代、五十代になって、毎日が全身ユニクロでは、惨めこの上ないわけです。年齢を重ねると、素材の高級感があるものをたとえ一点でもいいから身につけていないと、単なる哀愁の中高年になってしまう(中略)年を取ってから安物ばかり来ている人は、その佇まいのだけで哀しい負のオーラを発してしまうのです(中略)五十代になっても居酒屋チェーンのアルバイトで運良くまだ雇ってもらっているのはいいが、二十代の社員店員からこき使われている自分が創造できるのでしょうか(37~38ページ)

 

中高年の哀しさが見事に描かれています。林氏は作家なんだなあっていうことをまざまと実感します。こんな自分を想像したら、ちょっとゾーっとしてしまいました。では、金をかけると見た目がよくなるだけかというとそうではないです。

 

費やしたお金は何にいちばんわかりやすく反映されるかというと、会話の面白さだと思います。というのも、つい先日、知り合いの奥さんから、「ハヤシさんと話していると、男の人は楽しいでしょうね。政治や経済のことだって話を合わせられるし、オペラや歌舞伎や小説のこともわかるし、あと美味しいワインやお店も知っているから・・・・」と言われて、泣けるほど嬉しかったんです。たしかに、いろんなものを観に行ったり、食べたり、ということにはずいぶんとお金をかけてきましたから、ああ、やっぱり、自分に投資してきた甲斐があったのかなぁと、報われる思いがしました。さて、そうして自分への投資が実を結び、会話の面白い人間になっていくと、いろんな人が寄ってくるし、お座敷がいっぱいかかるようになります。そこで、また面白い人に出会って、さらにどんどん会話が広がって魅力的な人間になっていくのです(62ページ)

 

よく自分に投資しなさいと言われます。投資といっても何をすればいいのか、した場合にどんなメリットがあるのか、いまいち分かりませんでしたが、林氏の話はとてもよく分かります。腑に落ちるとは、このことを言うのです。

 

年を取って、三流仲間は自分を出し抜いたりせずに、ずっと三流のままでいてくれるだろうという安心感。周りはみんなぼんやりしていてプレッシャーもないし、とにかくラクですから、居心地が良い。三流の世界は人をそのまま三流に引き止めておこうとするやさしい誘惑に満ちているのです(50ページ)

 

これはドキッとしました。わたしも身に覚えがありますが、ついついいつもの飲み屋で、お店の人や常連さんとだらだら飲んでくだをまいている、いつもの職場のメンバーと居酒屋でまったく意味のない人間関係の話をして飲んでいるというやつです。

 

結局、自分自身の仕事についてぼんやりとしか考えてこなかった人が、理想の収入を稼ぐ相手と巡り会うことは叶わず、三十前後になって妥協して、年収三百万~四百万円の男性と結婚して子どもを生む。だから「節約術」が流行るわけですよね(128ページ)

 

さっこん節約術がブームですが、こうい流れがあるといわれると納得です。それにしても林氏、きびしい~。

 

世の中というのは、つつましく安価だったり比較的誰もが手に入りやすいものに幸福を感じると「いい人」と言われ、その反対の嗜好を持つと「嫌な人」とうしろ指をさされることになっているようです(174ページ)

 

なんとなくばくぜんとは感じていましたが、こう言われると、まさにそれそれと言ってしまいます。このようにズバッと述べる表現力、さすが物を書くことを仕事している人だけあります。林氏はここでは後者の人になりますが、ここまではっきり言える人は、決して『嫌な人」ではありません。

 

人に否定されたら、悔しい気持をパワーに変えてしまいましょう。凹んでいるだけでは、悪口を言った憎たらしい相手の思うツボではありませんか。今に見てろよ、と思う打たれ強さを意識的にでも持ちたいものです(111ページ)

 

恋愛でいうと、彼女(彼)に振られたとき、落ち込んでばかりいないで、自分磨きをして、相手に振ったことを後悔させる、というのに近いのかなあと思いました。林氏は本が売れて有名になったため、バッシングもすさまじかったのではないかと思います。そんな林氏がこう言うことには、重みがあります。

 

私は、直木賞以降の年月を自ら「失われた十年」と言うことも多いのですが、なにはともあれ、絶対にすべてを芸の肥やしにしてやる、と思って努力し続けていると、実は後でいちばん胸を張れる機関になっていたりします。たとえば仕事で干されたり、辛い時期に入っている人も、苦難は次へのステップだと信じて、どうか頑張ってほしい(116ページ)

 

この本で林氏はときどき厳しいことを言いますが、この言葉からは、その裏側に、若い人を励まそうという温かい優しさを感じます。