日々読書、時々一杯、折々投資

私の趣味をそのままタイトルにしました。 趣味のことでこれいいなあと思ったことを書いていきます。それが少しでもみなさまの参考になればさいわいです。

飲み会とかでみんなが面白がって聞いてくれる話のネタに困ったときに読んで頂きたい本

カレーライス進化論(著者:水野仁輔)、イースト新書Q、2017年5月初版第1刷発行、

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カレーライス。おそらく、カレーライスを食べたことがないという人はいないでしょうし、また、カレーライスが嫌いという人もいないのではないかと思えるほどの国民食。この日本人にとってなじみ深いカレーですが、この本は意外な事実を述べています。

 

日本で初めてのインドカリー(中村屋)は、今からおよそ90年前に登場した。日本最古のインド料理店(ナイルレストラン)は、今からおよそ70年前に創業している。日本にカレーという料理が伝わったのは、明治維新(1868年以降)のころといわれているから、150年近く前になる(中略)我々日本人が、「インドカレーは知らないが、カレーは知っている」という時代が少なくとも60年は続いたという事実だ(95ページ)

 

日本のカレーはインドから伝わったカレーとは別もののようです。ではカレーは日本起源の料理?そんなはずはありません(笑)。なんと、インドから伝わる前にイギリスから伝わっていたそうです。その名は「ブリティッシュカレー」(95ページ)。カレーのこと知っているようで意外と知らないことがあります。イギリスからカレーが日本に伝わって150年の歴史があります。そうすると、カレーはいつのまにか日本独自の進化をとげています。

 

日本でカレーをおいしくするために重要とされているプロセスは、色々とある。

1.玉ねぎをアメ色になるまで炒める

2.ブイヨンをひく

3.長時間かけて煮込む

4.スパイス30種~40種をブレンドする

5.カレー粉と小麦粉をオーブンで焼く

6.隠し味を駆使する

7.ひと晩、寝かせる

大事なことは、これら7つのプロセスは、すべてが日本で独自に生み出された手法であり、日本のカレーでしか重視されていないということだ。意外に思えるかもしれないが、インドやその周辺諸国をはじめ、世界中に存在するカレーにおいて、僕の知る限り、この7つのポイントのどのひとつをとってもことさらに重視する傾向は存在しない(147ページ)

 

たしかに、どれも聞いたことがあるものばかりです。しかし、どれも日本のカレー作りでしか重視されていないとは。でも、これらのプロセスが日本のカレーをおいしくしていることは間違いないようです。

 

カレー味という概念は、おそらく日本人に特有のものだ。海外に行って通用するものではない(中略)たとえばカレーハンバーグは、本当にカレー味がするのだろうか?カレーハンバーグは、カレーの味がするのではなく、ハンバーグの味がするはずだ(中略)カレー味がしないのは、カレー粉に「味をつける」という作用がないからだ。カレー粉は、ほとんんどの場合、複数種類のスパイスを混合して作られる(中略)スパイスに味付け作用はない。スパイスで味はつかない。だから、カレー粉で味はつかないのだ(170~171ページ)

「カレー味がする」と感じるのは、カレーの香りがカレーライスの味を想起させるからである(173ページ)

 

びっくりです。カレー味がじつは存在しないとは。スパイスと味は別というのはたしかで、「コショウ味」とは言わない。味でないものに味を感じてしまうのは、カレー粉というスパイスがカレーライスと結びついているからというのが水野氏の説明ですが、カレーライスという料理は、味でないものに味を感じさせてしまうというすごいパワーをもった料理ということになります。

 

現在、カレー文化が存在するのは、日本だけである。世界中にカレーは存在する。でも世界中のどこにもカレー文化は存在しないのだ。日本を除いては(中略)カレー専門店という外食業態がある。説明するまでもないが、カレーだけを専門的に提供する店。日本では当たり前のこの業態が、世界中のどこにもない、インド料理店ではない。カレーの専門店である。イタリア料理店は世界のどこにでもあるが、ナポリタン専門店は日本以外に成立しえない、みたいなことに近いのかもしれない。要するに日本に伝わり、日本で独自に育ってオリジナリティあふれる料理に成長したカレーというものは、それを専門的に提供する店が全国に何千件も生まれるほど、特別な存在になっているのである(中略)なぜ、他の国で成長しなかったカレーが日本においてだけ成長したのか。その理由は本当にわからない。不思議な現象だというしかない(207~208ページ)

 

これも日本独自の世界の話です。味のないところに味を感じてしまう日本人ですから、外国にはないカレー文化が日本で生まれるのは、とうぜんといえばとうぜんかもしれません。でも、これもびっくりです。海外にはカレー専門店はないとは。つまり、ココイチは日本にしかないということですね。日本人は外国人に比べて独創性がない創造性がないなどとよく批判されますが、このカレー文化の話を聞くと、そんな批判は的外れです。

こんど、外国人を食事に連れていく機会があったら、日本が誇れる食文化ということで、カレー屋さんに連れていくことにします。